2024年9月号
「取引先別管理」で経営の「解像度」を上げよう!
決算書や試算表を見ていて、「表示されている勘定科目の中身をもっと細かく、リアルタイムで確認したい」と思ったことはありませんか。
インボイス制度の導入によって、正確な会計処理を行う上で必要不可欠となったのが、自計化システムの導入と、取引先およびそのインボイス番号の管理です。同制度導入を機に定着した取引先別管理を、会計処理だけでなく経営分析にも活かしてみましょう。
主要勘定科目等(売掛金、買掛金、売上高、売上原価、経費科目等)について取引先別管理を行うと、自社の取引状況や債権・債務の取引先別の残高確認が容易にでき、経営課題や売上・利益アップのヒントをいち早く見つけられるようになります。
また、売掛金と売上高の取引先別管理に加えて、FXクラウドシリーズの「得意先順位月報」を活用すると、取引先別の詳細な分析ができるようになります。
こんなときどうする? 災害時の税務上の取扱い
夏から秋にかけては台風シーズン。風水害や地震等により法人の資産が被害を受けたときの損害額や復旧費用、被災した従業員や取引先を支援したときの支出等の多くは、当期の費用や損失として損金とすることができます。災害時によくあるケースを確認してみましょう。
- 被災した自社の従業員等へ災害見舞金品を支給した
- 取引先等へ災害見舞金等を贈った
- 被災地に自社製品等を贈った
- 取引先等へ事業用資産を供与した
- 取引先の売掛金等を免除した
ただし、被災した取引先等への支援であっても、場合によっては寄附金や交際費等に該当するものもあります。災害時の税務上の取扱いについて判断に迷われた際は、当事務所までご相談ください。
発注事業者のための 11月1日施行「フリーランス法」のポイント
発注事業者(業務を委託する事業者)とフリーランス事業者(業務を受託する事業者)との取引の適正化等を目的とした「フリーランス法」が11月1日に施行されます。
この法律は、原則として事業者間(BtoB)における委託取引が対象で、フリーランス事業者に対して、発注事業者が果たすべき最大「7つの義務項目」を定めています。具体的な義務項目は次のとおりです。
- 書面等による取引条件の明示
- 報酬支払期日の設定・期日内の支払
- 禁止行為
- 募集情報の的確表示
- 育児介護等と業務の両立に対する配慮
- ハラスメント対策に係る体制整備
- 中途解除等の事前予告・理由開示
発注事業者が満たす要件によって、遵守すべき義務項目は異なります。また、もしも義務項目に違反した場合には、罰則が科されることとなっています。施行日までに、必要に応じて業務フローや委託内容等を見直し、スムーズな取引に向けて準備を進めておきましょう。
2024年8月号
「雑収入」、正しく計上していますか?
会社の通常の事業とは関連しない「営業外収益」のうち、少額なものや、たまたまの取引で得た収益は、実務上「雑収入」として計上します。
例えば、不動産等の賃貸収入、保険会社からの契約者配当金、使用しなくなった車両・機械装置等の売却代金、自動販売機による収入、鉄くず・建設廃材等の売却代金、消費税の納付差益・精算差益、代理店手数料――等が雑収入に該当します。
雑収入は、通知があった時や債権が確定した日に収益計上すべき取引であり、税務調査でも期ずれを指摘されがちです。たとえ少額であっても漏らすことなく、正しく計上しましょう。
雑収入の判断や取扱いについて迷われた際は、ぜひ当事務所までご確認ください。
会社の将来のために!貸借対照表の「磨き上げ」を
1年間の経営成績を表す損益計算書に対して、過去から現在に至るまでの経営努力の結果を示しているのが、貸借対照表です。財産や債務の内容、利益や損失の過去からの蓄積が表れている貸借対照表の「磨き上げ」をして、今から将来に備えておきましょう。
経営者が最高経営責任者として経営を担った後は、「次世代に事業承継する」「M&Aにより会社を譲渡する」「廃業する」等を選択することになります。ところが、金融機関からの借入金が多額であったり、貸借対照表が実態を表していなかったりした場合には、いずれの選択肢を選んだとしてもスムーズに進まない可能性があります。
そのため、今のうちから貸借対照表の「磨き上げ」が必要なのです。自社の貸借対照表を、①不良債権 ②不良在庫 ③貸付金・仮払金等 ④投資等 ⑤借入金 ⑥隠れ債務(連帯保証を含む)の有無 ⑦自己資本――の観点からチェックしてみましょう。
パート・アルバイト等の社会保険加入を考える
「年収の壁(106万円)」などで話題に上ることが多い社会保険(厚生年金保険・健康保険)。政府はいま、「多くの人に手厚い社会保障を」との方針のもと、社会保険適用拡大の制度改正を進めています。
令和6年10月から「従業員数51人以上」の会社が義務的適用となり(現行は「従業員数101人以上」の会社が義務的適用)、次の基準をすべて満たすパート・アルバイトの方が、社会保険の新たな加入対象者となります。
- 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
- 所定内賃金が月額8.8万円以上
- 2か月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない(休学中、定時制・通信制の方を除く)
なお、従業員数をカウントする際は、店舗や工場等の複数の拠点を持つ会社では、全拠点の従業員数を合算する必要があることに注意しましょう。
新たに社会保険に加入した従業員の手取りが減らないよう、手当を支給するなど収入を増加させた場合は、「キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)」の活用が可能です(令和8年3月31日までの措置)。
2024年7月号
金融機関は融資審査でココを見る!
融資審査にあたり、金融機関が重視するのは、主に①貸したお金は何に使われるのか?(資金使途)②貸したお金はきちんと返済されるのか?(返済能力)――の2つです。金融機関からすれば、「将来、返済するためのお金(返済原資)」を生むものでなければ、融資は難しくなります。
そこで融資の申し込みにあたっては、「借りたお金は何に使うのか」「融資実行後、どのくらい利益が生まれるのか」「その利益からいくら返済していくのか」を、社長自身の言葉で説明できるように準備しておきましょう。これらの説明が明確で、かつ具体的であればあるほど、金融機関は融資実行を判断しやすくなります。
また、年1回の決算書に加え、「TKCモニタリング情報サービス(MIS)」を通じて、定期的に試算表も金融機関に提出するようにしましょう。積極的・定期的な情報開示は、金融機関との信頼関係をより深める「第一歩」です。
その支出、本当に「修繕費」でいいの?
「修繕費」とは、社屋や工場の外壁塗装、機械や車両のメンテナンスなど、会社が保有する固定資産の通常の維持管理と原状回復にかかる支出を指します。修繕費は、当期の費用として計上することができます。
修繕費と迷う支出に、「資本的支出」があります。新たな機能の物理的な付加や品質・性能の向上によって、固定資産の価値や耐久性をアップさせるような修理・改良を行った場合の支出が該当します。この場合には固定資産として計上し、法定耐用年数の期間中、減価償却費(費用)として計上しなければなりません。
なお、税務調査では実際に修理を行った箇所を確認することがよくあります。修理箇所の作業前後の写真や、修理内容がわかる資料を保存しておくと良いでしょう。修繕費か、資本的支出か。判断に迷ったら、ぜひ当事務所までご相談ください。
押さえておきたい「残業手当」の基礎知識
残業手当は、会社が定めた「所定労働時間」を超えて労働させた場合に従業員に支給する賃金のことで、時間外労働手当とも呼ばれます。
「法定労働時間(1日8時間、1週40時間)」を超えて労働した従業員に対して、会社は割増賃金を支払わなければなりません。また、深夜や休日の労働には、別途割増賃金を支給する必要が生じます。
残業手当が支払われないと、従業員の離職につながるだけでなく、訴訟に発展してしまうおそれもあります。「労働の対価」という考え方のもと、適切に支給しましょう。
また、「なぜ残業が生じているのか」をあらためて考える機会をつくることも必要です。働き方改革が進み、ワークライフバランスが重視される昨今。残業時間の削減は、従業員の満足度向上や定着、採用の強化などにつながります。デジタル活用による「残業ありきの働き方」の見直しもあわせて進めましょう。
2024年6月号
給与計算担当者のための「定額減税」取扱いの最終チェック
令和6年6月から「定額減税」が始まります。所得税の定額減税は、原則として、年末調整時の「一括控除」が認められておらず、月次での対応が必要になります。とじ
6月以降の給与計算事務をスムーズかつ適切に実施できるよう、次のことを準備しておきましょう。
- 控除対象者の確認と減税額の確定:給与計算担当者は「令和6年6月1日」時点で、自社の従業員のうち「誰が」「いくら」減税となるのか──を確定する必要があります。
- 「各人別控除事績簿」の作成:各従業員の減税額が確定したら、氏名、扶養親族等の人数、合計の減税額を記載した一覧表「各人別控除事績簿」を作成しておきましょう。
- 給与等の明細書の様式の見直し:定額減税がスタートすると、各従業員の給与等の明細書に、当該給与等の所得税から控除した額を記載する必要があります。事前に明細書の様式を見直しておきましょう。
「交際費」、安易に使っていませんか?
令和6年度税制改正で、法人税において交際費等から除外される1人あたりの飲食費の基準が5千円以下から1万円以下に引き上げられました。とは言え、会社のお金を安易に使うのは考えものです。
そもそも「交際費等」とは、得意先や仕入先等、会社の事業に関係のある人に対して、接待や贈答、慰安等を行うために支出する費用。会社の売上や利益の維持・増加、円滑な取引の継続等のために支出するものです。
そのため、交際費等が使われている実態が、個人的な友人とのゴルフや家族との飲食のような、役員の私的な支出であれば、役員への給与とみなされ源泉所得税が課されることになります。また、会社では損金算入が認められず、法人税等の課税額の増加につながることも。
「経費になるから」と公私混同はせず、適切な支出を心がけましょう。
デジタル化への対応で税務手続がスムーズに!
現在、国税庁は「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」を目指して、税務手続のデジタル化を推進しています。中小企業等にとっては、以下のような点で利便性が向上しています。
- キャッシュレスで「行かない」納付:e-Taxを利用したダイレクト納付、インターネットバンキングなどを利用すれば、窓口に行く手間や現金管理の事務負担を削減できます。
- 年末調整の簡略化:「マイナポータル」や給与計算ソフトを活用すれば、煩雑な年末調整の手続きもスムーズに進みます。
- 個人の確定申告は「書かない」時代に:e-Taxや「マイナポータル」の機能拡充に伴い、給与等の収入金額や医療費の支払額などのデータも自動的に取り込み、入力なしで確定申告を行うことができます。
税務手続のデジタル化は、従業員の対応を含め準備が必要になります。当事務所と一緒にデジタル化を進めましょう。
2024年5月号
小さな会社の値決め戦略
「値決めは経営」と言われるほど、経営において重要な位置を占める価格設定。資源価格や原材料価格の高騰を受け、製品・サービス等のコストは上昇傾向にあります。
また、賃上げ機運の高まりもあり、人件費の増加も見込まれます。適正な利益を確保し、日頃、頑張ってくれている従業員に報いるためにも、適切な「値決め」がますます重要になっています。
次の3つのポイントを踏まえ、自社の値決めの方針についてあらためて考えてみましょう。
- コストと利益を踏まえて価格を見直す
- 自社の「強み」を見つめ直す
- 値上げ等の交渉ではその根拠となる具体的なデータを提示する
中小企業向け「賃上げ促進税制」のポイント
企業の賃上げを応援する税制として設けられた「賃上げ促進税制」。従業員に対する給与等の支給額(雇用者給与等支給額)を前年度よりも一定割合増加させた場合に、賃上げ額の一部を法人税から控除できる制度です。
令和6年度税制改正により、適用期限が3年延長され、最大控除率もアップ。加えて中小企業については、赤字であった、もしくは大きな黒字ではなかったために税額控除をしきれなかった場合に、最長5年間、未控除額を繰り越せるようになりました。
同税制の適用を受ける前に、次のことを確認しておきましょう。
- ベースとなる前年度の雇用者給与等支給額を把握する
- 直近の経営状況を踏まえ、①どの程度の賃上げが可能か②その際、何%の税額控除を受けられるか――を確認する
- 賃上げの原資となる利益(限界利益)を確保する方法を検討する
中小企業のためのメンタルヘルスケアの基礎知識
5月から6月にかけては、季節の変わり目とも相まって、メンタルヘルスの不調を訴える人が多くなるシーズンです。1人ひとりの従業員に本来の力を発揮してもらうには、企業におけるメンタル面での健康を守る取り組み(メンタルヘルスケア)が大切です。
メンタルヘルスケアとは、すべての働く人が健やかに、いきいきと働けるような気配りと援助をすることと、その活動が円滑に実践される仕組みづくりのことをいいます。
メンタルヘルスケアの第一歩は、従業員自身にメンタル面のセルフケアに取り組んでもらうことです。従業員がメンタルヘルスの変化に気づき、セルフケアに取り組むきっかけの1つとして「ストレスチェック」があります。積極的な活用を検討しましょう。
また、メンタルヘルスの異変を自覚した従業員をケアできるよう、①専門家を活用する②相談しやすい環境を整える――など、社内の体制づくりも大切になります。
2024年4月号
所得税・住民税の「定額減税」のポイント
令和6年度税制改正により、6月から納税者(合計所得金額1,805万円以下の給与所得者と個人事業主等)と、その配偶者を含む扶養親族1人につき4万円(所得税3万円・住民税1万円)の定額減税が行われます。
所得税については、6月1日以後最初の給与等の源泉徴収される所得税から減税額を控除。控除しきれない場合は、減税額に到達するまでそれ以後の給与等の支給時に順次控除する仕組みのため、給与計算の担当者は注意が必要です。
給与計算担当者は、従業員から提出された「扶養控除等申告書」「源泉徴収に係る申告書」を基に、減税額の計算対象となる配偶者や扶養親族を正しく把握する必要があります。これらの申告書から把握できない配偶者等については、年末調整で調整します。
従業員の残業時間を正しく把握していますか?
令和2年から行われている中小企業の時間外労働(残業)の上限規制。令和6年4月1日から建設業・自動車運転の業務・医師に対する猶予が終了し、「残業」への社会の見方がより厳しくなると予想されます。これを機に自社の残業の状況を再確認し、適切な労務管理に努めましょう。
そもそも労働時間は、①所定労働時間②法定内残業時間③法定外残業時間――の3種類に分けられます。このうち③法定外残業時間は、原則として「月45時間、年360時間以内」に抑えなければなりません。残業を減らすための取り組みとしては、次のようなものが挙げられます。
- 残業の事前承認制の導入
- 変形労働時間制の採用
- 事業・製品・商品構成の見直し
- 新たな技術の積極的な導入
令和6年4月1日から義務化!相続で不動産を取得したら登記が必要です
相続によって取得した不動産(土地・建物)の登記(相続登記)がされないまま相続が繰り返され、登記簿上の所有者がわからない「所有者不明土地」が全国で増加しています。その発生予防の一助として、令和6年4月1日から、相続した不動産について不動産登記簿の名義を変更する「相続登記」が義務化されます。
- 相続人は、不動産を相続(遺言を含む)で取得したことを知った日から3年以内に、法務局に登記の申請をしなければなりません。
- 令和6年4月1日より前に相続した不動産についても、未登記であれば、令和9年3月31日までに相続登記をする必要があります。
- 「正当な理由」がないにもかかわらず、相続登記をしない場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。
なお、相続登記の期限までに遺産分割をまとめることが困難なときは、令和6年4月1日から新たにスタートする「相続人申告登記」という手続きを活用すると良いでしょう。
2024年3月号
決算の準備はお早めに!スムーズな決算のための最終確認事項
3月は企業の決算が集中する月です。決算を迎える企業は、決算日までに次のような点を確認しておきましょう。
- 請求を再確認する:売掛金の計上漏れがないか、納品書控・得意先元帳・売掛金台帳等の記録を確認する。
- 滞留・不良債権への対応を検討する:滞留・不良債権化している売掛金等は、貸倒損失や貸倒引当金を計上できる条件を満たしているかどうかチェックする。
- 不良在庫は決算日までに処分する:セール等による値引販売や廃棄処理、買取業者への依頼等によって処分することを検討する。
- 固定資産を確認する:①実際に事業用として稼働しているか②少額減価償却資産の特例が適用できるか③その固定資産の修理は修繕費か――を確認する。
- 仮払金等を精算する:残高がある場合、精算して適切な勘定科目に振り替える。
「お金がない!」にさよなら 「キャッシュ・フロー経営」で安心の経営を!
手元により多くのキャッシュ(現金・預金)を残すことを重視する経営を「キャッシュ・フロー経営」といいます。資金の入りを「多く・早く」、資金の出を「少なく・遅く」することがポイントです。自社の仕入から販売、支払い、回収までのサイクルを次の指標で確認することが重要です。
- 棚卸資産回転期間(日)=棚卸資産÷純売上高×365
- 売上債権回転期間(日)=売上債権÷純売上高×365
- 買入債務(支払基準)回転期間(日)=買入債務÷仕入代金支払高×365
- 必要運転資金回転期間(日)=(棚卸資産回転期間+売上債権回転期間)-買入債務回転期間
「必要運転資金回転期間」は、資金調達が必要な期間です。この期間を短くすることで資金の心配が減り、安心の経営につながります。
令和6年4月からルールが変更に!「労働条件」を従業員にはっきりと伝えていますか?
新たな従業員の雇用や、有期雇用の従業員との契約更新の際に義務付けられている「労働条件の明示」。そのルールが、令和6年4月1日から変わります。令和6年4月1日以降、新たに書面で明示すべき事項は次の通りです。改正点の確認とともに、自社の労働条件およびその明示の方法を見直してみましょう。
- すべての従業員に対する明示事項:就業場所・業務の変更の範囲
- 有期雇用の従業員に対する明示事項
- 有期労働契約の更新の上限
- 無期転換申込機会
- 無期転換後の労働条件
2024年2月号
商売繁盛の2つのカナメ!「日々の記帳」と「月次決算」
商売繁盛の「カナメ(要)」となるのが、「日々の記帳(毎日、会社で会計データ〈仕訳〉を入力すること)」と、年12回の「月次決算」です。
日々の記帳は、①自社を守るための証拠づくり②経営者自身への報告(自己報告)── という2つの側面があります。日々の記帳が習慣になっているか否かで、お金の使い方や行動にも大きな差が出てきます。日々の記帳を良い習慣としてしっかり根付かせましょう。
月次決算とは、「経営者自身が、毎月の業績を翌月早々に把握でき、かつ、活用できる状態」を指します。そのためには、発生主義で正しく月次決算を行い、前月の取引にかかった費用/得た収益を正確に把握することが何よりも重要になります。
これらの前提は、①正確な日々の記帳をサポートする法令に準拠した会計システムを活用すること②会計事務所のチェック・助言を毎月受けること(月次巡回監査)── です。一緒に商売繁盛を目指しましょう。
お金の流れが一目瞭然 「キャッシュ・フロー計算書」を見てみよう!
会社の経営にとってキャッシュ(現金・預金)は、人間の体でいう血液に相当します。
人が貧血になれば倒れてしまうように、会社のキャッシュが少なくなれば企業活動は停滞し、倒産という事態にもなりかねません。会社のキャッシュを増やすことは、経営を安定させ、将来への投資を自己資金で行えるなど経営の自由度が増すことにもつながります。
「キャッシュがきちんと生み出されているか」は、キャッシュ・フロー計算書で確認しましょう。
「Ⅰ 営業活動によるキャッシュ・フロー」「Ⅱ 投資活動によるキャッシュ・フロー」「Ⅲ 財務活動によるキャッシュ・フロー」の3つに分類され、それぞれの活動でキャッシュがどれだけ増減し、最終的にどれだけ残ったのかが表示されます。
自社のキャッシュ・フロー計算書を見ながら、あらためて最近の経営状況を思い返し、今期、来期の資金計画に活かしてみましょう。
個人事業者のための令和5年分消費税・所得税の確定申告の注意点
個人事業者の消費税や所得税の確定申告の時期になりました。免税事業者からインボイス発行事業者となった個人事業者は、今年から消費税の確定申告・納税も必要になります。
その際、免税・課税事業者の期間を区分することが重要です。業種にかかわらず売上税額の一律2割を納税額とする特例措置(2割特例)を適用することも検討しましょう。
所得税の確定申告で注意しなければならないのは、家事費と家事関連費です。家事費は業務に関係のない生活(プライベート)のための支出で、必要経費として認められません。
したがって、仕入代金・広告宣伝費・従業員給与など、業務上の必要経費と家事費とはしっかり区分しておく必要があります。
家事関連費は、必要経費と家事費が混在した支出です。例えば、店舗併用住宅の水道光熱費や家賃、火災保険料、業務と生活において利用する自動車の諸費用等が該当します。
家事関連費については、使用時間や使用頻度などの合理的な方法によって按分し、業務上必要な部分を明確にすることで、その部分が必要経費として認められます。
2024年1月号
2024年はこんな年!世の中の動きをチェックしよう
2024年には、会社の経営に関わるさまざまな制度改正が予定されています。例えば、次のような制度改正があります。
- 電子取引データの電子保存の本格義務化(1月1日~)
- 暦年課税制度・相続時精算課税制度の見直し(1月1日~)
- 建設業・自動車運転の業務・医師の残業規制開始(4月1日~)
- 相続登記の義務化(4月1日~)
- フリーランス保護新法施行(秋ごろまでに施行予定)
- 社会保険の適用拡大(10月1日~)
自社で対応が必要となるものを事前に把握し、準備を進めておきましょう。
黒字経営への道しるべ(第6回/最終回)自社の「必要利益」をしっかり認識しよう
「経常利益」は、限界利益から固定費を引いた残りで、経営の総合的な成果、いわば社長の「最終成績」ともいえる数字です。経常利益がマイナスであれば、慢性的な資金不足を引き起こしかねません。
また、たとえ経常利益がプラスでも、自己資本の蓄積が少ない場合は、借入金を返済するための元本等となるため、キャッシュとして残るまでには至りません。法人税等の納税資金を準備する必要もあります。こうしたことから、安定した経営を継続するために、毎期、黒字化を目指していくことは非常に大事です。
黒字決算を実現するには、「PDCAサイクル」と呼ばれる業績管理の実践が必要になります。それは、期首に立てた計画(Plan)に沿って行動計画を実行(Do)し、計画と実績の差異を検証(Check)し、課題や変化への対策を考え実践(Action)すること――です。
PDCAサイクルの前提となるのが、正確な月次決算です。月次決算を行って変動損益計算書を確認していると、早期に課題を発見し、打ち手を検討することが可能になります。
これから増える? 「ペポルインボイス」って何?
インボイス制度の開始後、PDFをはじめとした電子データによる「電子インボイス」を受け取っている会社も多いことでしょう。電子インボイスの一種で、世界各国はもちろん、日本でも現在導入が進んでいる「ペポルインボイス」。その主な特徴は次のとおりです。
- 送信/受信側が同じシステムを利用していなくてもデータのやりとりが可能
- 発行者名・品名・取引金額等のインボイスの記載事項について、受信したシステムでその内容を正確に読み込めるため、請求書の確認・仕訳入力が楽になる
ペポルインボイスの送受信には、「ペポルサービスプロバイダー」に認定されている企業と契約を結ぶ必要があります。その点、TKCは、「ペポルサービスプロバイダー」に国内で初となるタイミングで認定されています。
また、TKCのFXシリーズ・SXシリーズを利用している場合には、標準機能でペポルインボイスの送受信が可能です(送信機能は今後順次搭載予定)。ペポルインボイスの利用を検討されている場合は、当事務所にご相談ください。
2023年12月号
黒字経営への道しるべ(第5回)適切な労働分配を考える
自社が稼いだ付加価値(限界利益)に対して、人件費(賃金、給与、賞与、役員報酬、法定福利費等)が占める割合を「労働分配率」といいます。人手不足等で賃上げの機運が高まる中、適切な労働分配率の管理はますます重要になっています。
人件費の原則は、「労働分配率をおさえながら1人当たりの人件費を高く」することです。ただし人件費を増やしすぎれば赤字に転落するおそれもあるため、自社に合った適切な労働分配率・給与水準を保つことは大切です。
従業員にとって納得感のある給与水準とするには、①年収の時給換算で生産性アップ②柔軟な勤務・給与体系の設定③利益を公平に分配するルールづくり――といった具体策があります。
適切な労働分配率の管理とともに、原資となる限界利益を増やす取り組みも重要です。
令和5年分「年末調整申告書」作成上の注意点
年末調整事務は、従業員が提出した基礎控除申告書、扶養控除等申告書などの「年末調整申告書」に基づいて行うため、従業員に記載上の注意点を事前によく説明しましょう。
本年中の従業員の親族の異動(結婚、出産、家族の就職、離婚、死別など)について確認し、訂正等があれば、再度、扶養控除等申告書の提出を受けます。
配偶者控除等や扶養控除等を受ける従業員には、配偶者や子どもの収入(所得の見積額)の誤りや記載もれがないよう、よく確認するように注意喚起しましょう。
また、年末調整事務の電子化も検討してみましょう。電子化によって、給与事務担当者と従業員双方の事務負担を減らし、会社全体の生産性を向上させることができます。
押さえておきたい!外国人材活用の基礎知識
訪日観光客の対応や人手不足の解消が期待される外国人材の活用。外国人(日本国籍を持たない人)には、入国の目的に応じて「在留資格」が与えられており、その資格の範囲内でのみ、就労することが可能となっています。
また、中長期で日本に在留する外国人には、多くの場合「在留カード」が発行されています。外国人材の採用時には、同カード表面の「在留資格」欄や「就労制限の有無」欄、「在留期間」欄を必ず確認しましょう。
なお、外国人材に支払った給与等は国内源泉所得に該当し、所得税と住民税の課税対象になります。住民税については、前年に給与所得がある場合、日本人従業員と同様に特別徴収(給与からの天引き)を行うことになります。
未納があると、在留期間の更新申請等が許可されない場合があります。国籍を問わず、適正な納税が大事です。
2023年11月号
正しく知って「働き控え」の見直しを!「年収の壁」をおさらいしよう
最低賃金が全国平均1,000円台に引き上げられる中、「年収の壁」は、従業員はもちろん、経営者にとっても大きな関心事の1つです。
所得税の課税対象となり、配偶者控除・扶養控除の対象外になる「103万円の壁」、社会保険の加入対象となる「106万円の壁」、国民年金・国民健康保険の加入対象となる「130万円の壁」――。
これら3つの「年収の壁」についてよく知り、個々人に合った働き方を選べるようになれば、従業員にとっては世帯年収のアップが、経営者にとっては人手不足解消が期待できます。「年収の壁」にとらわれすぎない働き方を、従業員と一緒に検討してみましょう。
こんなときどうする?インボイスの処理についての素朴な疑問
インボイス制度では、仕入税額控除を受けるためには、原則として一定事項を記載した帳簿と仕入先から受け取ったインボイスの保存が必要です。一方で、実務では、次のようなケースもありますので対応を確認しましょう。
- インボイスを発行できない免税事業者等からの課税仕入れであっても、令和8年9月30日までは、消費税額の80%相当額について仕入税額控除が受けられます。
- 従業員の通勤手当・旅費交通費等において、賃金規程等に基づいて従業員に支給する通勤手当、出張旅費規程等に基づいて支給する出張旅費・宿泊費・日当は、一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。
- 旅費交通費や備品購入等における従業員の立替払いの精算については、原則として「会社宛てのインボイス」が必要です。「従業員宛てのインボイス」の場合は、従業員が作成した「立替金精算書」等も合わせて保存することが求められます。
令和6年から変わる 贈与税の「暦年課税制度」
贈与税の課税方法の1つである「暦年課税制度」は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額から、基礎控除額110万円を差し引いた価格に課税されるものです。直系尊属(父母や祖父等)から18歳以上の子や孫等への贈与は、一般の贈与よりも税率が軽減されています。
同制度では、相続等によって財産を取得した人が被相続人の死亡の日からさかのぼって3年の間に取得した財産について、相続税の課税価格に加算されます(相続前贈与の加算)。
令和6年1月1日以後の贈与から、この加算期間が3年から7年に延長されます。加算期間の延長によって相続時に課税される相続財産が増加するため、相続時の税負担が大きくなることが見込まれます。同制度の活用は早めに検討しましょう。
2023年10月号
インボイス制度開始!10月1日以後の返品、値引き等への対応に注意!
売上代金の決済時に、取引先(買手)が振込手数料相当額を差し引いた金額を振り込むことがあります。この場合の振込手数料相当額について、売手は「雑費」か「売上値引き」として処理することが一般的です。
しかし、インボイス制度開始後に「雑費」として処理すると、原則として金融機関等からインボイスを受け取る必要があり、事務負担が増えることになります。
一方、「売上値引き」として処理すると、税込金額1万円未満の売上に係る対価の返還等については返還インボイスの発行が免除されるため、事務負担が軽減されます。
また、会計上は「雑費」として処理し、消費税法上は「売上値引き」として処理することも認められます。この場合、振込手数料相当額について売上のマイナス処理を行わずに返還インボイスの発行が免除されます。
制度対応だけではもったいない!「経営データの電子化」に取り組もう
令和5年12月31日、電子帳簿保存法による電子取引データの保存についての「宥恕措置」が終了します。
現在は、電子メール等で送受信した請求書や見積書等の電子取引データ(PDF等)をプリントアウトして保存し、税務調査等で提示・提出できるようにしていれば問題ありませんが、令和6年1月1日からは紙による保存は認められず、電子データによる保存が義務付けられることとなります。原則として全ての法人・個人事業者が適用対象です。
この制度改正を大きな機会として、紙で受け取った書類も全てスキャンして電子で保存する体制へと大きく切り替え、「経営データの電子化」に社内全体で取り組みましょう。
TKCの自計化システム「FXシリーズ」の「証憑保存機能」を利用すれば、電子帳簿保存法の保存要件を満たして保存することができます。また、スマートフォンで紙の領収書等の証憑を撮影して、電子データとして保存することも簡単です。
黒字経営への道しるべ(第4回)固定費管理は経営者の腕の見せどころ
売上高の増減にかかわらず、会社の維持に必要となる「固定費」をどのように管理するかは、経営者の腕の見せどころです。
「人件費」や「地代家賃」、「水道光熱費」など、まずは自社の費用の中で固定費になるものを洗い出し、「何が・誰が管理可能なのか」「金額に見合った効果を得られているか」「稼働率を上げられないか」という3つの視点から、固定費の変化を確認しましょう。
固定費には、自社の努力で短期的に管理可能(削減が可能)なものと、短期的には管理不能(削減が困難)なものがあります。また、社長だからこそ管理できるものと、部下社員でも管理可能なものとがあることにも留意しましょう。
固定費は限界利益を稼ぐための支出ともいえることから、改善について考える際は、単純なコストカットではなく「かけた費用に見合う効果が得られているか」という視点も重要です。
生産性向上という観点から、自社の機械や設備等の稼働率を高めて有効活用する――という視点も、固定費の管理には有効になります。
2023年9月号
制度対応だけではもったいない!「経営データの電子化」に取り組もう
令和5年10月1日のインボイス制度開始後、原則として、売手は買手からの求めに応じて、インボイスを発行しなければなりません。
ただし、売手において課税資産の譲渡等(資産の引渡し、貸付け、役務の提供)が9月30日以前に行われた取引については、請求書等の発行日が10月1日以後であっても、現行の請求書(区分記載請求書)で問題はありません。
請求の締め日が20日など、月の末日でないケースでは、「9月分」と「10月分」に請求書を分けて発行するなどの対応が必要になります。制度開始前からインボイスを発行しても問題はないので、準備ができた時点でインボイスに切り替えておくと良いでしょう。
黒字経営への道しるべ(第3回)限界利益をしっかり確保しよう
経営において売上高と並んで重要な指標となるのが「限界利益」です。
資源高や円安の影響で原材料や燃料等の価格が上がっている状況では、利益の確保が難しくなりがちです。「昨年より利益が出なくなった」と感じている場合、今一度限界利益がしっかり確保できているか確認する必要があります。
限界利益をアップさせるには、「販売価格を上げる」「変動費を下げる」「商品の組み合わせを考える」という3つの打ち手が挙げられます。
限界利益が増加すると、設備投資や従業員の給料、販売促進や新商品開発などに、より積極的に予算を充てることができるようになります。また、黒字経営のためには、必要となる固定費に目標とする経常利益を加えて、限界利益の目標を設定することが重要です。
自社の状況を踏まえて、打ち手を検討してみましょう。
他人事じゃない!「物流の2024年問題」と荷主にできること
仕入、出荷、備品購入などでお世話になる、企業の活動を支える大切なパートナーであるトラックドライバー。そのトラックドライバーに、2024年4月1日から時間外労働の上限規制(年960時間)が適用されます。それにより輸送能力の不足が懸念されているのが、「物流の2024年問題」です。
物流業界では現在、輸送能力の維持・確保のために賃金水準の向上や労働時間の短縮など、トラックドライバーの労働環境改善に向けた取り組みが検討されています。
その結果、輸送にかかる日数の増加や運賃の上昇など、荷主であるさまざまな事業者も影響を受けることとなります。決して、物流業界だけの問題ではありません。
荷主側では、例えば、運賃の改定分を価格転嫁できるよう取引先と交渉する、自社で届けられるものは直接届ける、といった対応策を検討する必要があるでしょう。
また、①短納期または急な配達・集荷依頼など負担のかかる依頼を見直す②自社の職場を改善して荷揃えや荷おろしを効率化する――など、運送会社に対する協力体制を整えておくことも重要です。
2023年8月号
黒字経営への道しるべ(第2回)
売上高に注目してみよう!
社長が最初に意識すべき「売上高」を、変動損益計算書で毎月確認いただきましょう。そのうえで、売上高が「増えた理由」「減った理由」を社長と一緒に探り、社長のここ1か月の経営感覚と、実際の数字の変化をすり合わせることが重要です。
その際、特に取引先別売上高を確認してみてください。主要な取引先について、当月と前年同月の売上高を比較し、「なぜ、この取引先からの売上高が上がっている/下がっているのか」、その背景や要因を考えてみると、売上高を伸ばす大きなヒントになります。
基本的に、売上高は「販売単価×販売数量」で決まるため、売上高を伸ばすには、販売単価を上げるか、販売数量を増やすか、そのいずれかが必要です。販売単価と販売数量、どちらを重視するのかを決めるのも大事な経営判断の1つです。社長と一緒に売上高のアップを目指しましょう。
インボイス制度直前対策【本則課税事業者向け】
受け取るインボイスの対応状況を確認しましょう
取引先から受け取る仕入インボイスについて、取引先の協力を得て、登録番号やインボイスの様式を確認しておきましょう。自社の経理処理に影響がある場合は、取引先と検討することも必要です。
インボイスを発行できない免税事業者等からの仕入については、仕入税額控除ができなくなる分、消費税の納税額が増えることになります。ただし、経過措置として、令和11年9月30日までは一定の割合を仕入税額控除することが可能です。
免税事業者等である取引先に対して、適格請求書発行事業者への登録を要請する際、要請に応じないことを理由に、価格引き下げや取引中止を一方的に通告する、著しく低い価格を設定する――などの行為は、独占禁止法や下請法等に抵触するおそれがあります。
自社を客観的な視点で見てくれる
金融機関とコミュニケーションをとろう!
「金融機関と接するのは苦手」という方もおられるのではないでしょうか。金融機関と話をするときの重要なコミュニケーションツールが、日々きちんとつけられた帳簿(仕訳)を基に作成された「決算書」です。
自社の健全な経営努力と正しい経理処理の賜物である決算書こそ、金融機関と話をするための共通言語となります。金融機関とのコミュニケーションにおいては、頻度も重要です。自社の強みや長所を知ってもらうためにも、積極的かつ定期的に自社の情報を提供・報告しましょう。
自社を客観的な視点で見てくれる金融機関との対話を通じて、事業上のアイデアや気づきが得られることもあるからです。業績の良し悪しにかかわらず、経営に関するデータを企業自ら開示することは、融資の必要性等をいち早く金融機関に伝えることにもつながります。
そのため、決算書に加えて、まずは四半期から試算表を提供することを目指しましょう。
2023年7月号
黒字経営への道しるべ(第1回)
「社長の成績表」変動損益計算書を見てみよう!
見込んでいた儲けの額と、決算書や損益計算書上に表示される「売上総利益額」の数字とに差がある――と感じたことはありませんか?
このような場合、変動損益計算書を利用することで、頭の中でイメージしていた利益構造と実際の数字とを一致させることができます。
変動損益計算書は、すべての費用を売上高に伴って増減するか否かで「変動費」と「固定費」とに分けて表示した損益計算書で、売上の増減で限界利益がどれくらい変わるかが把握しやすくなる、などの特長があります。
また、変動損益計算書は社長の意思決定の結果が表れる「社長の成績表」ともいわれ、①自社の製品やサービスが顧客や市場に評価された結果②儲けの範囲内で経費をどのように使ったか――が表示されます。
7月号から開始の全6回連載「黒字経営への道しるべ」では、「いま、自社に何が起きているのか?」を読み取り、次の打ち手を考えるために欠かせない変動損益計算書のポイントについて解説していきます。
インボイス制度3か月前対策
自社のインボイスは要件を満たしていますか
インボイス制度への対応はお済みでしょうか。制度開始を目前に控えたいま、自社がインボイスとして発行する請求書等に記載事項のモレがないかあらためて確認しましょう。
インボイス制度では、現在、使用している請求書等(区分記載請求書等)に、①登録番号(「T」+13桁の数字)②適用税率③税率ごとに区分した消費税額等――の記載が必要です。記載事項にモレがないかを確認しましょう。いわゆる「レシート類」の簡易インボイスには、上記①および②③のいずれかの記載が必要になります。
インボイスに記載する氏名・名称等は、屋号や省略した名称でも構いません。ただし、電話番号を記載するなど、インボイスを発行する事業者が特定できることが必要です。
なお、インボイスに記載する「税率ごとに区分した消費税額等」について生じる1円未満の端数処理の方法(切上げ、切捨て、四捨五入)は、事業者の任意で決めて構いません。ただし、端数処理は1つのインボイスにつき、税率ごとに1回のみとされています。
令和6年3月31日まで
「特例承継計画」提出の検討を!
一定の要件を満たすことで、事業承継の際に贈与税・相続税の納税を猶予する「特例事業承継税制」。同制度を利用するには、令和6年3月31日までに「特例承継計画」を都道府県に提出して確認を受け、令和9年12月31日までに自社株式の贈与や相続等を行う必要があります。
令和6年3月31日までに特例承継計画を都道府県へ提出していない場合には、その後期限内に自社株式の贈与や相続等を行っても、特例事業承継税制を利用することはできません。そのため同税制を利用する可能性があれば、まずは特例承継計画を作成し、早めに提出しましょう。
特例承継計画の作成・変更には、税理士等の認定経営革新等支援機関による指導・助言を受けることが必要です。
2023年6月号
信頼される会社へ 会社と経営者の資産をしっかり分けよう
会社の資産と経営者個人の資産の区分が曖昧になりがちな中小企業では、外部関係者からの信頼を高めるための第一歩として、会社と経営者個人の資産を明確に区分・分離することが重要です。
そのための具体策としては、①経営者個人が所有する資産が会社の業務に使われている場合、賃貸契約書を作成して会社から経営者へ適切な賃料等を支払う②事業に使っている経営者個人の資産はできる限り会社所有とする――などが挙げられます。
また、「経営の基本」である現金管理も、会社と経営者個人の資産を区分するための重要な対応策となります。次のような対応が自社で徹底できているか見直してみましょう。
- 小型の金庫やコインカウンター等を用いて、会社と個人の現金が混ざるのを防ぐ
- 現金出納帳と実際の現金の残高合わせを毎日行う
- クレジットカードは会社用と個人のカードを分けて使う
- 立替金および経営者への仮払金や貸付金は、早めに精算する
月次決算データは宝の山 経営に活用しよう
経営者にとって、経営意思決定の大きな「拠りどころ」となるのが「変動損益計算書」です。
変動損益計算書とは、売上高の増減で変化する費用を変動費に、売上高にかかわらず発生する費用を固定費に分類して表示した損益計算書のことです。
通常の損益計算書に比べ、変動損益計算書は売上が変わった時のシミュレーションが簡単で、例えば「売上増に伴って新しく従業員を採用した場合、利益がいくら変わるのか?」といった経営上の判断をする時に役立ちます。
そして、変動損益計算書の大前提となるのが、正確な月次決算データです。
そのためには、①適時・正確な記帳②証憑の整理や仕訳入力等を自社で行う「自計化」③請求書や経費精算の徹底管理――の3つのポイントを押さえましょう。
月次決算を徹底し、変動損益計算書で自社の経営状態をタイムリーかつ正確に把握することで、問題点等に迅速に対応できるようになります。
生前贈与には注意! 相続財産への加算期間が延長
令和6年1月1日から、贈与税と相続税のルールが大きく変わります。贈与税には2つの制度があり、1つは「暦年課税制度」、もう1つは「相続時精算課税制度」です。
令和6年1月1日以降の各制度の改正内容は、次の通りです。
暦年課税制度
- 相続開始前7年以内の贈与額を相続財産に加算して相続税を算出(納付した贈与税額は差し引く。加算期間は順次延長)。
- 延長した4年間(相続開始4~7年前)に受けた贈与のうち、総額100万円までは相続財産に加算しない。
相続時精算課税制度
- 現行の暦年課税の基礎控除とは別途、110万円の基礎控除が創設。
- 贈与した土地・建物が災害により一定以上の被害を受けた場合、相続時に評価額の再計算が可能。
2023年5月号
販売目標の設定は「損益分岐点」がカギ!
損益がトントン、経常利益がゼロになる点(限界利益=固定費)を「損益分岐点」といい、そのときの売上高を「損益分岐点売上高」(固定費÷限界利益率)といいます。現状の損益分岐点を捉えておくことで、利益アップにつながるさまざまなシミュレーションが可能です。
例えば、賃金アップなど固定費が増加しても、いくら売上(販売単価×販売数量)があれば黒字にできるか、あるいは、目標利益を達成するために必要な売上高はいくらか、などを求めることができます。目標とすべき売上高がわかれば、どのように販売を伸ばすかについて、集中した検討ができるようになります。
相続による不動産の登記を忘れずに!
不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地や、所有者の所在が不明で連絡がつかない土地などの「所有者不明土地」の解消に向けた制度改正が本年4月より順次スタートしています。
主な制度として、以下が挙げられます。
- 令和5年4月1日~:相続開始から10年経過後に行う遺産分割は、原則として法定相続分か、指定相続分によって画一的に行うことになります。この措置は施行日前に開始した相続にも適用されますが、5年の猶予期間があります。
- 令和5年4月27日~:相続や遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により取得した土地を手放して国庫に帰属させる「相続土地国庫帰属制度」が始まりました。
ただし、土地の要件として、建物がある・土壌汚染がある・危険な崖にある・他人に使用されているなどの土地は除かれるうえ、負担金等の納付が必要になります。 - 令和6年4月1日~:所有者不明土地発生予防の観点から、相続登記の申請が義務化されます。
ここが知りたいインボイス⑥ 値引き・返品時には返還インボイスが必要?
インボイス制度では、適格請求書発行事業者が値引きや返品等を行ったときには、原則として返還インボイス(適格返還請求書)を発行する必要があります。そのため、代金決済の際に差し引かれた振込手数料相当額を売り手が「売上値引き」として処理する場合に事務負担が増えるとの懸念がありました。
令和5年度税制改正において、税込金額1万円未満の値引き・返品・割戻しなどの売上に係る対価の返還等については、返還インボイスの発行が免除されることになりました。
一方、振込手数料相当額を支払手数料として処理する場合は、返還インボイスの発行免除の対象外の取引となるため、金融機関や取引先が発行する支払手数料に係るインボイスの保存が必要になります。
ただし、課税売上高1億円以下など一定規模以下の事業者の税込金額1万円未満の課税仕入れについて、帳簿のみの保存で仕入税額控除を認める特例の対象になる場合は、インボイスの保存がなくても仕入税額控除を適用することが可能です。
2023年4月号
経営:経理業務は進化しています! ~電子化・ペーパーレス化への取り組みを~
経理業務の電子化・ペーパーレス化に取り組んでみませんか。昨今、取引先からの請求書等を電子データで受け取ることが増えていますが、今後、その電子データはそのまま電子で保存する必要があります。
一方、まだまだ紙でのやり取りも多く残っていると思います。その場合は、取引先と相談して電子データでの受け取りに切り替えることや、スキャナ保存によって電子データ化することなどを検討しましょう。
経理業務の電子化・ペーパーレス化は経理業務の省力化・効率化を実現するだけでなく、経営者がよりスピーディーに業績を把握することにつながります。
消費税:ここが知りたいインボイス⑤ こんなとき仕入税額控除やインボイスの保存はどうする?
現行の消費税法では、3万円未満の取引については帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる特例がありますが、インボイス制度開始後は、公共交通機関の運賃や自動販売機等での商品の販売など一部の取引を除いて、原則としてインボイスの保存が必要になるため注意が必要です。
例えば、クレジットカードを利用した際には、店舗等が発行する「ご利用明細」や「ご利用控」を、コインパーキングを利用した際には、発行されるレシート(簡易インボイスに該当するもの)を必ず受け取って保存することを徹底しましょう。
なお、令和5年度税制改正では、一定規模以下の事業者について税込金額1万円未満の取引であれば帳簿のみの保存で仕入税額控除を認める特例措置が設けられました(期間は令和11年9月30日まで)。
金融:4月から経営者の個人保証の仕組みが変わります!
国(経済産業省・金融庁・財務省)は、経営者の個人保証に依存しない融資慣行の実現の加速化を目的に「経営者保証改革プログラム」を策定しました。
これに基づき金融庁は、金融機関に「経営者保証に関するガイドラインを浸透・定着させるための取組方針」の公表(令和5年4月以降)を求め、金融機関はこの取組方針に基づいて、融資契約を行う際に「経営者保証ガイドライン」の要件の充足状況等を説明し、経営者の個人保証の有無を伝えることになります。
経営者は「経営者保証ガイドライン」が求める①法人と経営者との関係の明確な区分・分離、②財務基盤の強化、③財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性の確保――に取り組むことで、経営者の個人保証のない融資を受けられる可能性が高まるほか、財務経営力の強化につながります。
2023年3月号
ここが知りたいインボイス④ 適格請求書発行事業者の登録申請の注意点
インボイス(適格請求書)を発行するには、適格請求書発行事業者の登録が必要です。制度が開始される令和5年10月1日から登録を受けるためには、原則として3月31日までの登録申請を行わなければなりません。
しかし、令和5年度税制改正において、4月1日以後の申請であっても、10月1日を登録開始日として登録されることになるなど、柔軟に対応する方針が示されました。
ただし、「登録通知書」が届くまでには、e-Tax提出で約3週間、書面提出で約1か月半を要するとされています。登録申請の意思がある方は早めに申請し、対応準備を進めましょう。
なお、登録を受けると、登録番号や公表情報等が記載された「登録通知書」が送付されるとともに、国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト」にも掲載されます。
この費用、固定費?変動費? ~変動損益計算書の活用で儲けを見える化~
売上から変動費を引くと限界利益になり、限界利益が固定費より多いと黒字になります。変動費と固定費を分けることで、利益を出すためには売上がどれぐらい必要なのかを把握できます。
しかし、通常の損益計算書は、支出部分を「売上原価」と「販売費及び一般管理費」に分けるため、変動費と固定費を迅速に確認することができません。ここで役立つのが支出部分を変動費と固定費に分類し直した変動損益計算書です。
この変動損益計算書を経営により活用するためには、その費用が固定費なのか変動費なのかを実情に合わせて見極めることです。業種・業態によっては売上にともなって変動する要素が固定費に含まれていることもあります。
この部分を変動費として管理することで、より正しい限界利益が把握できることになります。固定費と変動費が自社の実情に合っているかどうかを確認してみましょう。
中小企業の60時間を超える残業代が引き上げられます!
令和5年4月1日より、中小企業の月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が25%から50%に引き上げられます。
なお、月60時間の時間外労働時間の算定には、法定休日における労働時間は含まれません(法定休日での労働は割増賃金率が35%になります)。
この機会に自社の残業のあり方を見直してみましょう。非効率な残業を減らすために残業申請書を整備することや、変形労働時間制を採用するなどの方法があります。
また、明らかに所定労働時間内に終了しない業務量を与えている場合や、残業の慢性化を使用者が黙認している場合は、この機会に見直しましょう。
2023年2月号
主力商品は本当に儲かっているのか?~商品ごとに限界利益率を見る~
原材料費や仕入価格の上昇が利益に影響を及ぼしています。変動損益計算書を活用して黒字化にする方策を考えてみましょう。
自社商品の限界利益率を商品ごとに調べてみましょう。売上単価の高い「主力商品」が必ずしも限界利益率の高い儲かる商品とは限りません。売上単価よりも、限界利益率の高い商品の販売を伸ばすことで、利益の拡大につながります。
売上高を「単価×数量」の式に分解すれば、いくら売ればよいのか(金額ベース)、いくつ売ればよいのか(数量ベース)で検討することができます。変動損益計算書を商品グループ別、部門別などに分解することで、自社の利益構造もわかるようになります。
ここが知りたいインボイス③ 仕入税額控除にはインボイスが必要!
インボイス制度では、一定の事項が記載された帳簿と仕入先から受け取ったインボイスの保存がなければ、原則として仕入税額控除を適用することができません。
自社が受け取るインボイスへの対応として、仕入先が適格請求書発行事業者であるかどうかの有無、インボイスの様式や受取方法(電子か紙)についての確認などが必要です。
また、公共交通機関の運賃や自動販売機での購入のように、売手からインボイスを受け取ることが困難な取引については、一定の条件のもと帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合があります。
こんな収入や支出は確定申告が必要です!
所得税の確定申告に向けて、申告が必要な収入や支出を確認しましょう。
- 補助金や協力金は、一部を除いて収入として計上します。
- 台風や地震などの災害により自宅や家財が受けた損害は、雑損控除が利用できる場合があります。
- 店舗兼自宅の家賃や水道光熱費などの家事関連費は、業務上必要な部分を明らかにして、按分して経費に計上します。
- 従業員や役員などサラリーマンなどの給与所得者でも確定申告が必要な場合があります。
- 給与収入が2,000万円を超える
- 副業収入、不動産売却収入、保険の一時金や満期返戻金などの収入
- 同族会社の役員が受け取る会社への貸付金の利子・貸付不動産の賃貸料
2023年1月号
経営理念は「見えない資源」~稲盛和夫に学ぶ
京セラ創業者・稲盛和夫氏は、企業は製品や技術力、生産技術、資金力などの「見える資源」だけでなく、社員の能力ややる気、知恵、逆境を乗り越える力などの「見えない資源」もあって初めて発展、成長できるといいます。
稲盛氏は人生で成功するための方程式として「人生・仕事の結果=考え×熱意×能力」を提唱しています。多少能力は劣っていたとしても、強い情熱があれば素晴らしい成果を上げられることを、過去に実感しています。
さらに重要なのは考え方で、考え方がマイナスだと結果はマイナスになります。創業間もない京セラが大企業に伍して戦うことができ、急成長できたのは熱意や考え方がプラスだったからですが、そのベースとなったのが、稲盛氏自身の強い情熱と経営理念でした。
変化の激しい時代だからこそ経営理念という見えない資源の価値を改めて考えてみてはいかがでしょうか。
今年はこれだ!インボイスと電子取引への対応を進めよう!
令和5年は、消費税インボイス制度と電子取引データの電子保存への対応の年です。
(1)10月1日からのインボイス制度への対応
- 10月1日からインボイスを発行するためには、3月31日までに適格請求書発行事業者への登録申請を済ませましょう。
- 自社が発行するインボイスを確定し、取引先に通知します。利用しているシステムのインボイス対応の確認や写しの保存方法を決めましょう。
- 取引先の適格請求書発行事業者への登録の意向や登録状況を確認します。取引先が発行するインボイスを事前に確認します。インボイス受取後の仕訳計上のタイミングや保存方法についての検討が必要です。
(2)電子取引データの電子保存への対応
電子取引データの保存については、現在、宥恕措置として令和5年12月31日まで紙による保存が認められていますが、令和6年1月1日から電子取引データは電子データの保存が必要になります。
自社の電子取引を洗い出し、その保存方法を決めましょう。保存には、専用のソフトウェアを利用して事務負担の軽減を図りましょう。
※対応が遅れている中小企業などに配慮して、宥恕措置終了後も、引き続き紙による保存を認める措置が検討されています。今後の法改正にご注意ください。
まだ間に合う! 補助金等の最新情報
補助金や助成金の中には、令和5年の1~2月頃に申請期限を迎えるものがあります。活用を検討中の補助金等があれば、期限を再確認して対応しましょう。
- 事業再構築補助金:第8回公募申請期限/令和5年1月13日
- IT導入補助金(デジタル化基盤導入枠):申請期限/令和5年1月19日(予定)
- IT導入補助金(セキュリティ対策推進枠):申請期限/令和5年2月16日(予定)
- 小規模事業者持続化補助金:第11回公募申請期限/令和5年2月下旬(予定)
- 業務改善助成金:申請期限/令和5年1月31日
※上記の情報は令和4年11月10日現在のものです。補助金等は延長、再募集されることがありますので、最新情報に注意しましょう。
2022年12月号
めざせ! 付加価値経営〈その3〉借入元本を返済するために必要な利益は?
ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)の利子免除期間(3年)を経過すると利子を返済していかなければなりません。また、元本返済の据置を受けている場合は、その期限に応じて返済が始まることになります。
現在、資金繰りが安定していても、借入返済の原資を確保していかなければなりません。借入返済の原資は「利益」です。その確保には、①付加価値(限界利益)を引き上げる、②固定費を極力抑える、この2つの組み合わせによって黒字決算を実現させることが必要です。
借入返済について、漠然と考えるのではなく、具体的な数字に落とし込み、返済に必要な目標利益を計算し、それを目標として取り組みましょう。
令和4年 年末調整はここに注意
年末調整業務をスムーズに進めるには、事前の準備が大切です。年末調整の主な申告書として、基礎控除申告書、配偶者控除等申告書、所得金額調整控除申告書、扶養控除等申告書、保険料控除申告書、住宅借入金等特別控除申告書があります。
基礎控除申告書は、年末調整の対象者が必ず記入します。また、給与収入850万円超で、納税者本人や同一生計配偶者、扶養親族が特別障害者である、扶養親族が23歳未満であるなどの条件に該当する場合は、所得金額調整控除申告書への記入が必要です。
扶養控除等申告書は、扶養親族の異動がないかを確認し、収入がある場合は所得の見積額を記入するほか、障害者、ひとり親、寡婦等の該当も記入します。
年末調整は電子化することで、申告書の記入や計算が自動化され、手間やミスの削減につながる、控除額の検算や控除証明書との突き合わせなどの経理担当者の確認作業が不要になる、など事務負担の軽減を図ることができます。
ここが知りたいインボイス② どの書類をインボイスにすればよいのか?
インボイス制度では、書類の名称(請求書、納品書、領収書等)に関係なく、登録番号や適用税率、消費税額等などの一定の事項が記載されたものがインボイスになります。
事業者間取引を行う事業者の場合、通常は、請求書がインボイスになるでしょう。また、取引の都度、取引先に納品書を発行し、請求書は1か月分をまとめて発行するような場合には、納品書に一定の事項を記載することでインボイスにすることも可能です。どちらをインボイスにするかによって、消費税額の計上時期が異なります。
インボイスは、レシートや手書きの領収書でも構いません。小売業など不特定多数の者と取引する事業者は、インボイスに代えて、記載事項を簡易にした簡易インボイスを発行することも可能です。
2022年11月号
ここが知りたいインボイス① なぜインボイスが必要なのか?
インボイス制度が始まると、買手は売手から受け取ったインボイスと一定の事項を記載した帳簿書類の保存がないと、原則として仕入税額控除ができなくなります。
インボイスは、売手が買手(得意先)に、適用税率や消費税額等を正しく伝えるための手段となるもので、きちんと対応しないと得意先に迷惑をかけることになります。
インボイスを発行するには、適格請求書発行事業者の登録を受けなければなりません。買手が、仕入税額控除を必要としない消費者や免税事業者のみの場合は、インボイスを発行する必要がないため、あえて適格請求書発行事業者の登録をしないという選択肢が考えられます。
めざせ!付加価値経営〈その2〉自己資本比率を高めるにはどうすればいいのか?
例えば、コロナ禍で売上高がゼロになるような店舗もあり、補助金等を申請してもなかなか給付されず、困った方もおられたでしょう。そんなとき自己資本が潤沢であれば、社員の給与や店舗の家賃を払い続けることができます。
このようなことから、今、自己資本に関心が高まっています。自己資本は、経済情勢が悪化したときに企業を守る防波堤となるのものといえます。自己資本比率を高めるには、付加価値(限界利益)を高めることが前提となります。
大事なことは、絶え間なく商品の品質向上やサービス提供の工夫を行うとともに、月次決算の精度を高めて、業績管理をより確実なものとし、コスト削減に努めて利益を出し、適正に税金を納めて内部留保をすることを地道に進める必要があります。
(注)本稿では「付加価値」を「限界利益」の意味で解説しています。
103万円・106万円・130万円! パート等の扶養の範囲の注意点
仮に夫婦共働きで妻がパートで働いているようなとき、夫の扶養範囲に収まるかどうかの収入の基準として、103万円・106万円・130万円などの年収の壁があります。
妻の収入が給与のみで年収103万円以下のとき、妻に所得税は課税されず、夫も自身の収入から配偶者控除を受けることができます。妻の収入が103万円超201万円以下であっても夫の合計所得金額が1,000万円以下であれば、配偶者特別控除を受けることができます。
給与以外の収入として、株や為替、暗号資産等の取引による利益、物品等の転売益、生命保険の一時金、損害保険の払戻金等は、雑所得や一時所得として所得税の課税対象となる場合があります。これらを正しく把握しておかなければ、意図せずに「壁」を超えることなどが起きてしまいます。
106万円・130万円の壁は社会保険への加入の必要性にかかわるものです。保険や年金は、将来のお金の問題にもかかわります。働き方についても十分に検討しましょう。
2022年10月号
めざせ!付加価値経営〈その1〉付加価値を増やす経営をしてみませんか?
材料費をはじめさまざまなコストが高騰する中にあっても、付加価値を高めて、給与を増やし、社員に夢や希望を与える企業を目指しましょう。
付加価値とは、会社が創造した価値といえるもので、簡単にいえば「売上高」から「変動費」を引いた「限界利益(粗利)」のことです。
変動損益計算書を活用し、付加価値の増加を目指し、その結果として付加価値の増加の範囲内で人件費を増やせば、労働分配率の上昇を抑えられます。
収益力を改善するための計画をつくろう!
企業は、ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)等の返済の本格化や、原材料・仕入価格(変動費)、燃料費・光熱費(固定費)などのコスト上昇という厳しい状況の中にあり、付加価値を増やす対策が必要となっています。
利益確保のための方策を検討して、アクションプランに落とし込み、資金計画を作成しましょう。このような収益力改善の取り組みに対して、国も「ポストコロナ持続的発展計画事業」(ポスコロ事業)などで支援しています。
ポスコロ事業は、経営改善に取り組む企業が、税理士などの認定支援機関の支援を受けて、資金計画、損益計画、アクションプラン等による早期経営改善計画を策定する場合に、費用の一部を国が補助する制度です。4月に制度が改正され、過去にこの制度を利用した企業でも、一定の場合は2回目の利用が可能になりました。
今後増加する!? 法定福利費(事業主負担)について知っておこう
令和4年10月から従業員101人以上の企業を対象にパートタイマー等への社会保険の適用が拡大されます(令和6年10月からは従業員51人以上まで引き下げ)。これは、社会保障費の支出の増加に伴い、1人でも多くの人に加入してもらうことが立法趣旨です。
さらに、コロナ禍で雇用調整助成金の支出が激増し、雇用保険料の年2回(4月・10月)という異例の引き上げが行われます。
これら法定福利費の上昇が見込まれる今、機械化、IT化、DXの推進によって従業員の労働生産性を高めて実質的な負担を軽減することや、業績を伸ばして、限界利益(粗利)を増加させるなどの対応が必要になります。
2022年9月号
忘れていませんか? 不動産の相続登記 ~令和6年4月から登記が義務化!~
登記簿上の所有者がわからない「所有者不明土地」の解消のため、相続登記や住所等変更登記が罰則付きで義務化されるなど民法等が改正されました。また、土地利用の円滑化の観点から、遺産分割の長期未了状態を解消するための新たなルールも導入されます。
登記の義務化については、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記をしなければなりません(令和6年4月1日施行)。また、登記簿上の所有者は、住所や氏名を変更したときから2年以内に変更登記が必要です(令和8年4月27日までの政令で定める日から施行)。
この改正は、施行日前に発生した相続も対象となるため、注意が必要です。
また、遺産分割の新たなルールとして、相続開始から10年経過後に行う遺産分割については、原則として、法定相続分または指定相続分によって画一的に行うことになりました(令和5年4月1日施行)。
続く原材料価格の高騰! どうする値上げ・価格の見直し
エネルギー・原材料価格の高騰、急速な円安などから原価の上昇を招いていますが、単に原価上昇分を反映させるだけの値上げは難しいと考えている人も多いのではありませんか。「価値」を高めて「価格」を上げるなど、「上手な値上げ」を考えてみましょう。
- 値上げしやすい商品や取引先から値上げする。
- 商品の機能・品質を基本形のみに絞った「基本形」の部分を値下げして、無償提供していた付属品やサービスなどをオプションとして有料化する。
- 価格帯を増やす(例えば、2つの価格帯のある商材について、中間にもう1つ価格帯を設けるなど)。
- 直販を増やして、粗利益の増加を図り実質的な値上げ効果を得る。
- 独自化や差別化によって、高い価格で販売できるブランドをつくる。
ビジネスモデル俯瞰図で自社の全体像を可視化しよう
金融機関や取引先に対して、自社の概要を伝える機会が増えています。そのようなときは「ビジネスモデル俯瞰図」を作成して、自社の商流や事業内容をわかりやすく伝えましょう。
「ビジネスモデル俯瞰図」は、自社の業務の見直しや、課題の解決にも役立てることができます。売上高や構成比、限界利益などの数値を書き入れることで全体の流れがより具体的に見えてきます。
近年の金融機関においては、財務情報のみに依存せず、事業内容や成長性を適切に評価(事業性評価)して融資や経営助言を行うことを推進しており、その際にも「ビジネスモデル俯瞰図」は役立ちます。また、早期経営改善計画策定支援事業(ポスコロ事業)においても提出が求められます。
2022年8月号
金融機関との信頼関係維持はタイムリーな情報提供がカギ!
金融機関に融資申込みや業績の報告を行うときには、月次試算表などの根拠資料を一緒に提供しましょう。それらの資料により、金融機関は業況変化や業績見通しを確認できるため、融資手続きなどがスムーズになるでしょう。
コロナ禍などさまざまな理由で、企業と金融機関との面談の機会が減る中で、金融機関との信頼関係を維持していくには、これまで以上に、正確でタイムリーな情報提供が重要になっています。
また、「TKCモニタリング情報サービス」を利用すれば、決算書や月次試算表データを金融機関に自動的に開示することができます。
電子取引データの保存の実務③(全3回)~保存方法を検討する~
電子取引データを電子で保存するには、改ざん防止のための措置(真実性)や可視性・検索性、保存期間などの法令の要件を満たさなければなりません。
保存方法には、専用の保存システムを「利用する」「利用しない」の2つの方法がありますが、法令の要件を満たした上で、経理業務の負担軽減とデジタル化を図るには、専用の保存システムを利用するほうがメリットは大きいといえるでしょう。
電子取引データの保存は、法令対応というだけでなく、これからのデジタル化社会の進展を考えると、経理業務を大きく変える可能性があります。取引先がペーパレス化・デジタル化に積極的であれば、自社もその対応が求められるでしょう。
今後のデジタル化を見据えた対応を進めましょう。
役員と会社の取引②(全2回)~貸し借りを軽く考えていませんか?~
役員と会社の関係は、同族会社やオーナー企業であっても、法律上は別人格です。
役員と会社との間で、金銭や不動産の貸し借り、資産の売買などを行う際には、外部との取引と同様の手続きを踏まないと、会社法上や法人税法上の問題が生じるおそれがあります。
例えば、金銭や不動産の貸し借りを行うときは、「金銭消費貸借契約書」や「不動産賃貸契約書」を作成します。会社への損害を防止するため、取引の内容によっては株主総会や取締役会の承認決議を受けて、議事録を作成します。
役員が会社から受け取る、または支払う利息や家賃が適正でない場合に、法人税法上、役員給与とされる場合があるため注意が必要です。
2022年7月号
電子取引データの保存の実務② ~自社の電子取引を把握する~(全3回)
たとえば、電子メールに添付された請求書等をはじめ、ネット通販サイトからダウンロードした領収書等、クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードの支払データ、ペーパレス機能のあるファクス複合機での取引情報の受信などは、電子取引に関する情報(電子取引データ)になります。
これらの電子取引データは、令和6年1月1日から、電子帳簿保存法上、紙による保存ではなく、電子取引データでの保存が義務化されます。電子取引データの保存への対応の第一歩は、取引状況の実態把握です。
まずは、経理部門をはじめとする全部門、全役員・従業員を対象にすべての取引を洗い出します。税法上保存すべき紙の書類と電子取引データについて、取引先、種類(請求書、領収書など)、受取・保管部門、受取方法、枚数などをリストアップすることから始めましょう。
逆風下での黒字化のヒントを考える
日本電産の創業者・永守重信氏は、①井戸掘り経営、②家計簿経営、③千切り経営という3つの経営手法を駆使して、何度も危機を乗り越え、会社を成長させたと言います。
- 井戸掘り経営:井戸水を汲むように、考えれば考えるほど知恵やアイデアは湧いてくるという考え方
- 家計簿経営:小さな節約を積み重ねてやり繰りする家計にならって、会社も支出の一つひとつを見直して、経営改善を図るという考え方
- 千切り経営:大きな課題や難しい課題は、いくつもの小さな課題に分解すれば、解決策が見つかるという考え方
このような経営手法を参考に、社長と従業員が一緒に考える機会をつくり、黒字化に向けて頑張りましょう。
役員と会社の取引① ~見落としがちな役員給与の注意点~
役員給与は、会社法上、株主総会において総額を決議し、各役員の給与額は、取締役会や取締役間の協議等で決定します。
実際の支給にあたっては、1か月以下の一定期間ごとに同額で支給する定期同額給与であれば、全額損金算入が認められます。ただし、期首から3か月以内の改定など一定の場合を除いて、原則として、事業年度の途中での支給額改定は認められません。
役員賞与を支給したいときは、予め支給時期や支給額を決め、所定の期日までに税務署へ事前確定届出給与として届け出て、届出どおりに支給すれば損金算入が認められます。
オーナー企業の場合、経営者自らが自身の役員給与を決めることになりがちです。自分の会社という意識から主観的に決めるのではなく、前年実績、当期の利益計画や業績見込みなどを基礎に、経営の現状と1年以内に返済する借入元本額を含めたキャッシュ・フローを確認して、よく検討した上で給与額を決定しましょう。
2022年6月号
電子取引データの保存の実務① ~宥恕措置の間に何をする?~(全3回)
取引先との間で取引情報を電子でやり取りする「電子取引」は、電子メールでの見積もりや発注、インターネットによる請求書や領収書の受け渡しなどが該当します。
このような電子取引に関する情報(電子取引データ)について、令和4年1月1日から、電子帳簿保存法において電子データによる保存が義務化されました。ただし、宥恕措置として、令和5年12月31日までは、紙に印刷して保存することも認められます。
令和5年10月からは消費税のインボイス制度も始まります。その対応と合わせて、今のうちから、電子データでの保存に取り組むようにしましょう。本年は、電子取引の洗い出し等を行い、来年は業務フローの改善・デジタル化を進めるなど、段階を踏んで令和6年1月1日に備えましょう。
新型コロナ貸付の返済にどう対応するか?
新型コロナ貸付の据置期間が終わって、返済が始まる企業も少なくありません。現在の利益からどれだけ返済原資を確保できるか確認しましょう。
複数の借入で返済額が多くなる場合は、借入を一本化し、借入期間を延長して、月々の返済額を軽減することも検討しましょう。もちろん業績の改善も行わなければなりません。
特に利益の確保は不可欠です。どのような時代であっても利益を出し続け、資金繰りが好転するような体質にすることが企業には求められます。
さらに、新たな融資が必要な場合は、新規借入を織り込んでも返済原資を確保できることがわかる資料を添えて金融機関に説明しましょう。返済の根拠が明らかであれば金融機関も融資判断をしやすくなります。
ポストコロナを見据えた中小企業の収益力改善等を支援!
コロナ禍において、売上減少や借入の増大に直面している中小企業を対象に、経済産業省では、金融庁、財務省等と連携し、「収益力改善」「事業再生」「再チャレンジ」というフェーズに合わせた支援策(中小企業活性化パッケージ)を実施しています。
「収益力改善」フェーズでは、税理士などの認定経営革新等支援機関による「早期経営改善策定支援事業」(ポスコロ事業)を見直し、ウクライナ情勢や原油価格高騰等に起因した影響を受けている事業者については、過去にポスコロ事業や「経営改善計画策定支援事業」を利用していても、再度利用することを可能としました。
「事業再生」「再チャレンジ」フェーズでは、中小企業活性化協議会による「プレ再生支援」「再生支援」「再チャレンジ支援」などが強化されました。
- プレ再生支援:将来の本格的な再生計画策定を前提とした経営改善支援
- 再生支援:事業に収益性はあるものの財務上の問題を抱える事業者に対して、専門家を交えた抜本的な再生支援を実施
- 再チャレンジ支援:事業継続が困難な中小企業、保証債務に悩む経営者等を対象に、外部専門家が円滑な再スタート等を支援
2022年5月号
ますます重要となる適時・正確な記帳
会計帳簿の本質的な役割は、「経営者への自己報告機能」と「証拠力の確保」です。
自己報告機能とは、財産や借入の現況、売上や利益、資金繰りといった経営成績がわかることです。経営者の正しい経営判断のためにも、日々の記帳によって、常に最新の状況を把握できる状態にしておく必要があります。
証拠力の確保とは、企業自らが適時・正確に記帳した帳簿には、証拠力があり、信頼性も高いということです。例えば、月次の締め後はさかのぼって訂正できない、訂正したときはその痕跡が残る会計システムで作成された帳簿の証拠力は高くなります。証拠力のある帳簿は、いざというときに会社を守るだけでなく、税務当局や金融機関からの信頼性を高めます。
将来を見据え“種まき”をしよう!
コロナ禍によって大きく変わった人々の消費行動や認識などは、コロナ収束後も以前と同じに戻ることはないでしょう。そういう中で企業は、経営環境の変化に適合していかなければなりません。
将来が明確でないのであれば、自社が望む新しい状況を創り出すことが可能です。将来なりたい会社像を描いて、それを実現するための戦略を考えてみましょう。戦略には「他社がマネのできない」「他社がマネをしたくない」自社の強みが必要であり、それを見つけることから始まります。
そしてその強みを活かすために、商圏、事業、顧客、商品・サービスの機能、品質、価格、納期、販売方法・ルート、設備・施設などに分けて、力を入れるもの、削減するものなどを検討しましょう。
社会保険の適用拡大と年金制度の見直し
令和4年度は、パートタイマー等への社会保険の適用拡大、在職しながら年金を受給する人についての年金受給の見直しなどが行われます。
- 現在、従業員500人超の企業では、月額賃金が8万8千円以上(年収約106万円)など一定の条件を満たすパートタイマー等は社会保険への加入義務がありますが、対象となる従業員数が、本年10月から100人超に、令和6年10月から50人超にまで引き下げられます。
- 特別支給の老齢厚生年金の支給停止基準が、報酬と年金の月額合計28万円超から47万円超に緩和されます。
- 65歳以降も厚生年金に加入しながら働く人について、働いた分の年金額への反映を毎年(年1回、10月分から)行う在職定時改定制度が導入されます。
- 年金の受給開始年齢は、従来70歳までの繰り下げが可能でしたが、4月から75歳まで可能になりました。
以上の改正は働く人たちの働き方にも影響を及ぼすものです。会社としても雇用について見直すきっかけにしましょう。
2022年4月号
中小企業の賃上げ税制はこうなる!
企業の積極的な賃上げを促すため、中小企業の賃上げ税制が強化され、賃上げの要件が、雇用者全体の給与総額の増加割合に応じて、次のようになります。
- 前年度比で1.5%以上の増加:給与増加額の15%を税額控除(従前のまま)
- 前年度比で2.5%以上の増加:給与増加額の30%を税額控除
上記①②のいずれかの賃上げを実施し、さらに教育訓練費を前年度比で10%以上増加させた場合は、税額控除率が10%上乗せされます。
例えば、給与総額を2.5%以上増加させ、さらに教育訓練費を10%以上増加させると、税額控除率は最大の40%になります(法人税額の20%が上限)。
また、赤字など業況が厳しい中でも賃上げ等に取り組む企業向けとして、ものづくり補助金や持続化補助金において賃上げを要件とした特別枠が設けられます。
どうする!? この売掛金 ~滞留債権の対応編~
長期間未回収の売掛金は、消滅時効(5年)に注意しつつ、取引先への訪問や電話によって粘り強く交渉を重ねます。取引先に買掛金がある場合は、売掛金と相殺する対応が考えられます。
相殺でも完済できなければ、残金の支払いについての協議が必要となります。協議では確実に支払うことの確約を得て、その内容は文書にしておきましょう。
また、催告書を配達証明付きの内容証明郵便で送付すれば、取引先への強い意思表示になるため、事態が進展する可能性があります。
法的手段としては、通常の訴訟に比べて手続が簡易な「支払督促」(申立てに基づいて簡易裁判所の書記官が相手方に支払いを命じる)や、「少額訴訟」(60万円以下の請求に限って利用できる)などがあります。
減価償却資産の基礎知識と令和4年度の改正点
減価償却資産は、原則として、取得価額をその耐用年数に従って按分し、減価償却費として費用計上します。ただし、取得価額が少額のものは、即時償却によって一時の費用として計上する方法などが認められています。
取得価額が10万円未満の減価償却資産や、中小企業者等が取得する30万円未満の減価償却資産は、一定の要件のもと即時償却が可能です。20万円未満の減価償却資産であれば、その資産の全部または一部を一括りにして取得価額の合計額を3年間で均等償却する方法(一括償却資産)も認められます。
令和4年度税制改正では、中小企業者等の少額減価償却資産の特例について、適用期限の2年延長の他、対象資産から「貸付けの用に供した資産」を除外する改正が行われます。(※10万円未満の減価償却資産や一括償却資産の対象資産についても同様の見直しが行われます。)
2022年3月号
インボイス制度の素朴な疑問⑤ 経理業務への影響と今、知っておくべき注意点は?
インボイス制度による経理業務への影響を確認しておきましょう。
- 請求書等(請求書、納品書、領収書など)のどれをインボイス(適格請求書)にするかを決めます。また記載項目が追加されるため、請求書等の様式変更、販売管理・請求書発行システムの設定変更などが必要になります。
- インボイス制度では、消費税額の計算方法の見直しが必要なケースもあります。当事務所にご相談ください。
- 制度の実施後は、受領したインボイスの記載項目を確認し、10%と8%の税率、免税事業者等からの仕入を分けて入力する必要があります。
- 従業員に対し、インボイス制度の周知とともに、免税事業者等からの仕入の注意点も踏まえた経費精算ルールの見直しが必要です。
どうする!? この売掛金 ~売掛金管理編~
売掛金の回収には、日頃の管理が大切です。
まずは、請求の締切日と支払日、支払方法(振込、手形等)など、約定をきちんと把握しておきます。入金があれば、どの取引先か、請求金額と合っているか、約定どおりか、などを売掛金台帳で管理します。
売掛金が未回収の場合、その原因の確認が解決の決め手になります。自社の請求もれやミス、商品・サービスへの不満・クレームなど、売掛金が支払われない原因が自社にあるときは、顧客への早急な対応や再発防止策をとるなど、信用回復に努めましょう。
取引先において、納品後の検収が未実施、経理ミスなどの理由で支払いが遅れていることもあります。日頃から取引先とのコミュニケーションを図っておくことが大切です。
令和4年度から 成年年齢、年金、育休が変わります ~事業や暮らしにどう影響する!?~
令和4年度は、成年年齢の引き下げ、年金制度、育児休業などの改正が行われます。
- 4月から成年年齢を18歳に引き下げ:18歳から親の承諾なしに契約が可能になります。
- 在職老齢年金の見直し:4月から「60~64歳の在職老齢厚生年金」の支給停止基準が28万円から47万円に緩和されます。在職中の老齢厚生年金受給者(65歳以上)の年金額について毎年10月に定時改定が行われます(在職定時改定)。
- パート等への社会保険の適用拡大:10月から、従業員101人以上の企業で働くパートタイマー・アルバイト(学生は除く)は、月額賃金8.8万円以上や週の所定労働時間が20時間以上などの一定条件を満たすと社会保険への加入が義務化されます。
- 介護・育児休業法の改正:4月から、育休取得等について個別の周知・意向確認などが義務化されます。10月からは子の出生後8週間以内に4週間まで出生時育児休業取得が可能となり、さらに育児休業の分割取得(2回まで)も可能になります。
2022年2月号
令和3年分 所得税の確定申告の準備
(1)個人事業者は、収入と必要経費を確認しましょう。
新型コロナ関連の支援金等をはじめ事業に関連して受け取った補助金等は収入になります。
仕入、従業員給与、広告宣伝費など事業に必要な費用は必要経費になりますが、事業主のプライベートな支出など事業と関係のない費用は必要経費になりません。
店舗併用住宅の家賃や水道光熱費などは、事業用の部分を面積、使用時間など合理的な方法で按分できれば、事業に使用した分は必要経費になります。
(2)給与所得者でも給与以外の収入があると確定申告が必要な場合があります。
給与収入が年間2,000万円以下の給与所得者は、年末調整をすれば確定申告の必要はありません。
ただし、同族会社の役員が会社から受け取った不動産賃貸料や貸付金利息、満期保険金、副業、資産の売却、海外資産の運用などによって収入を得た場合、金額等によっては確定申告が必要な場合があります。
インボイス制度の素朴な疑問④ 免税事業者はインボイス制度へどう対応する?
令和5年10月からスタートするインボイス制度は、消費税の免税事業者にも影響があります。
インボイス制度では、買手側が仕入税額控除を適用する要件として、売手が発行するインボイス等の保存が必要になります。インボイス等を発行できるのは、「適格請求書発行事業者」に登録した課税事業者に限られ、免税事業者はインボイスを発行することができません。
取引先が課税事業者の場合、取引自体の見直しなどを検討される可能性があります。まずは、事業の業況とともに取引先の意向を確認し、適格請求書発行事業者(課税事業者)になった場合の消費税の納税負担などの影響についても考慮して検討しましょう。
ただし、慌てて適格請求書発行事業者の登録を申請する必要はありません。令和4年中は、その影響を検証する時間に充てても、対応は十分に間に合います。
おさえておきたい! 新たな経済対策
政府の新たな経済対策(令和3年11月19日閣議決定)では、新型コロナウイルスで減収となった事業者向けの支援などが盛り込まれました。
- 新型コロナの影響で売上が減少した法人・個人事業者(フリーランスを含む)を対象に、売上高の減少幅に応じて、最大250万円の「事業復活支援金」(仮称)が給付されます。
- 政府系金融機関(日本政策金融公庫等)による実質無利子・無担保融資の申請期限が、「令和4年3月末まで」に延長されました。
- 新型コロナの影響で休業した企業に対する雇用調整助成金(特例措置)の申請期限が、「令和4年3月末まで」に延長されました。
2022年1月号
環境変化が著しい今だからこそブレない経営を!
大きな環境変化を経験してきた中で、さまざまな危機を力強く乗り越えてきた企業に共通するのは、経営理念に基づくブレない経営を実践していることです。
松下幸之助氏(旧・松下電器産業創業者)は、経営理念が根底にあって、人も技術も資金もはじめて真に生かされてくると話しています。稲盛和夫氏(京セラ創業者)は、経営理念によって経営者も躊躇なく経営に全力で打ち込めると説いています。
他方、大企業だけでなく中小企業においても経営理念を追求し、安定経営を実現しているところはたくさんあります。
先行きの見えない今だからこそ自社の経営理念を見つめ直すことが大切です。また、経営理念を明確にしていない企業においては、創業の原点や自社の存在意義に立ち返ってみましょう。
令和4年1月1日から全事業者に適用!電子取引の電子データでの保存が義務化
改正電子帳簿保存法において、令和4年1月1日から電子取引にともなう請求書等の取引情報は電子データで保存することが義務づけられました。
中小企業においても、電子メールでの請求書、領収書等の受け取り、インターネットサイトでの会社物品の購入、電子決済サービスの利用など、さまざまな電子取引が行われていることでしょう。自社の取引の中で電子取引に該当するものがないか、しっかり確認して対応しなければなりません。
電子取引データを保存する際は、定められた保存要件に準拠しなければなりませんので注意が必要です。また、保存媒体としては、ハードディスクやコンパクトディスク、DVD、クラウド(ストレージ)サービス等があります。
インボイス制度の素朴な疑問③ 仕入税額控除にはインボイス等の保存が必要
消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)がスタートすると、買手側は原則、売手側から受領したインボイス(適格請求書)等や、一定の事項が記載された帳簿を保存しなければ仕入税額控除を適用することができなくなります。
つまり、インボイスを発行できない免税事業者等からの仕入は仕入税額控除の対象外となるので注意しましょう(令和11年9月30日までは経過措置あり)。
ただし、中古車販売業、質屋、宅地建物取引事業者など、個人(消費者)から販売用の商品を買い取る場合や、鉄道やバス等の利用料、自動販売機での購入(いずれも3万円未満に限る)などにおいては、一定の事項が記載された帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められます。
2021年12月号
消費税インボイス制度の素朴な疑問② レシートや領収書はどう対応する?
インボイス制度の導入により、売手側は、買手側から求められたときはインボイス(適格請求書)を発行しなければなりません。
しかし、小売業、飲食店業、タクシー業など不特定多数の者と取引する事業者は、インボイス(適格請求書)の記載事項の一部を省略した簡易インボイス(適格簡易請求書)の発行が認められます。レシートや手書きの領収書も記載事項を満たしていれば簡易インボイスとして発行することが可能です。
また、コインランドリーや自動販売機、コインロッカーなど、代金の受領やサービスの提供を機械装置だけで行う場合、金額が3万円未満であればインボイスの発行が免除されます。ただし、セルフレジや食券類の自動販売機等ではインボイスの発行が必要です。
令和3年分「年末調整申告書」の作成はここに注意!
年末調整の業務をスムーズに進めるためには、従業員に正しく漏れなく年末調整申告書を記入(作成)し、提出してもらうことが重要です。特に以下の3つのポイントをおさえておきましょう。
- 「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」には、本人や配偶者の給与の収入金額、所得の見積額を計算して記入します。収入金額は1月~11月の給与支払明細書の課税支給額(賞与を含む)の合計に、12月の給与と賞与の支給見積額を合計して計算します。収入金額を申告書(裏面)の【給与所得の金額の計算方法】の表に当てはめて所得の見積額を計算します。
- 年収850万円を超える人で、23歳未満の扶養親族がいるなどの要件に該当する場合は、所得金額調整控除申告書の提出が必要になります。
- 年初に提出された扶養控除等申告書の内容に変更がないか従業員に再確認します。
給与計算業務のデジタル化を進めよう!
給与計算業務には、勤怠管理、給与・賞与の支給額の計算と振込、源泉所得税・社会保険料の徴収と納付、給与支払明細書の作成・配付、さらに年末調整などその内容は多岐にわたります。
しかし、標準・定型化した業務も多いため、給与計算ソフトの導入や、インターネットバンキングやダイレクト納付の活用、年末調整の電子化(自動転記・計算)など、デジタル化を図ることで業務の省力化・効率化が進み、経理担当者の業務負担を軽減することができます。
さらにデジタル化によって蓄積されたデータを活用すれば、人件費の管理(推移、労働分配率、残業手当など)や、働き方の見直し(残業時間の削減、有給休暇の取得促進)などにつなげることもできます。
2021年11月号
インボイス制度の素朴な疑問① インボイスの記載事項と保存の留意点
令和5年10月から消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されます。適格請求書とは、一定の事項が記載された請求書、納品書、領収書、レシートなどの書類や電子データなどのことでインボイスともいいます。
売手(適格請求書発行事業者であること)は、買手から求められたときは、一定の事項を記載したインボイスを発行し、その写しを保存する必要があります。インボイスの発行にあたっては、消費税額計算の端数処理や、納品書と請求書の記載事項などに注意が必要です。
買手は、仕入税額控除の適用を受けるために、自ら作成する帳簿に一定事項を記載して保存するとともに、原則としてインボイスの保存が必要になります。
コロナ禍だからこそ 月次決算で着地点を早く見定める!
月次決算には、いち早い業績把握、資金繰りの見通しを立てる、着地点を早く見定め、効果的な決算対策を打てるようにするなどのメリットがあります。経営の先行きが見えない今だからこそ月次決算が重要になっています。
月次決算のデータから、売上や利益、経費の詳細を確認してみましょう。利益は本来業務から得たものか、軽費の増減はどのように変化しているのか、それぞれの内容を把握して、適切な対応策につなげていくことが重要です。
コロナ禍にあって先行きが見通せない状況のなかでは、手元資金を厚くしておくような対策を検討しましょう。
パート・アルバイトで働く人の扶養の範囲を確認しよう
夫の扶養の範囲内で働きたい妻が、特に注意すべき自身の給与収入は、次の金額です。
- 103万円以下:妻自身に所得税は課税されないが、93万円~100万円を超えると住民税が課税される(自治体によって異なる)。夫は、所得税の配偶者控除を受けることができる(所得制限あり)。
- 103万円超:妻自身に所得税が課税される。夫は、配偶者控除に代わり配偶者特別控除を受けることができる(所得制限あり)。配偶者特別控除は、150万円までは、配偶者控除と同額の控除が受けられ、150万円を超えると段階的に控除額が減少していき、201.6万円以上で控除が受けられなくなる。
- 130万円以上:社会保険の扶養から外れ、一定の条件のもと妻に社会保険料の支払いが発生する。ただし、従業員が501人以上の企業に勤務しているなど一定の条件に該当すると、年間105.6万円以上で社会保険の扶養範囲から外れることに注意が必要。
2021年10月号
銀行へ行かずに納付する時代 ~会社のパソコンが銀行窓口に!~
給与の支給額の計算と振込、源泉所得税・社会保険料の計算と納付などの毎月の給与計算業務を電子化することで、業務の負担を軽減しましょう。
給与、源泉所得税・社会保険料は、「PXシリーズ」などの給与計算ソフトの利用によって、支給額や控除額を自動計算することができます。
給与・賞与の振込、源泉所得税・住民税・社会保険料の納付は、インターネットバンキングやダイレクト納付を利用して、社内やテレワーク先から振込、納付を行うことで、自社のパソコンが金融機関の窓口のようになります。
ルーティン業務だからこそ、電子化による業務負担の軽減効果は大きくなります。
就業規則に定年の定めはありますか?
高年齢者雇用安定法では、60歳未満の定年を禁止し、さらに雇用確保措置として「65歳までの定年引上げ」「定年の廃止」「65歳までの継続雇用制度の導入」のいずれかを義務づけています。さらに、今年4月からは、雇用確保措置に加えて、65歳から70歳までの就業機会を確保する努力義務が課せられています。
自社に定年制度を設けていますか。その定年年齢は、就業規則上、明確になっていますか。定年を定めていない場合は、トラブル発生の要因ともなります。高齢により十分に働けなくなった従業員であっても、合意なく労働契約を終了することはできません。
定年を明確に定めたうえで、定年後は有期契約による雇用にするなどの対応が必要です。
経営環境の「乱気流」を乗り越えるヒント
新型コロナによって一変した環境のなかで、自社が生き残るヒントを、「アンゾフの成長マトリクス」の4つの基本戦略をもとに考えてみましょう。この成長マトリクスは、数値計画を策定し、行動へ移すための重要な手掛かりとなります。
- 市場浸透戦略:今ある製品・サービスを、今のお客様にもっと販売する戦略です。現在の得意先への営業活動を強化してみましょう。
- 新製品開発戦略:新製品・新サービスを開発し、今のお客様に販売する戦略です。現製品・現サービスへの顧客の不満を改善して、新たな価値観を提供する新製品・新サービスを生み出しましょう。
- 新市場開拓戦略:今ある製品・サービスを新しいお客様に販売する戦略です。現製品・現サービスの対象、用途、色彩や形などを変えることで新たな顧客層を掘り起こしましょう。
- 多角化戦略:新製品・新サービスを開発し、新しいお客様に販売する戦略です。成長が期待できる業種・業態への転換を含め、市場、顧客、製品・サービスとも新規に進出するため、難易度、リスクが高くなります。
2021年9月号
コロナ禍での借入金返済が難しいときはどうすればいいのか?
借入金の返済は、長期的な見通しを立てておき、「返済が難しいかもしれない」とわかったときには、いち早く会計事務所に相談しましょう。相談が遅くなると対応策が限られてしまいます。約定返済日に慌てて、金融機関に条件変更を申し込んでも、すぐに手続きはできないことを理解しておきましょう。
債務条件の変更では、元金返済の猶予、返済期日の延長が一般的です。いずれも毎月の返済金額が減少し、負担を軽減することができます。しかし、返済金額によっては債務の一本化などもあるので、財務の現状を会計事務所と相談することが大事です。
社長の頭の中を「見える化」しよう
~「ポストコロナ持続的発展計画事業」で難局打開へ~
コロナ禍にあって受注減少などの影響を受けた状況から、新たな製品開発や新規顧客の獲得などによる業績回復が必要となっている会社も多くあります。
新たな事業展開を考える際には、業務フローと商流を図式化してみましょう。図式化することで、事業全体の流れや細部が把握でき、その特徴や損益構造がよりわかりやすくなります。そのことによって解決すべき課題も明確になります。また、社内だけでなく金融機関などの外部に対しての説明もしやすくなります。
政府は「ポストコロナ持続的発展計画事業」として、税理士等の認定支援機関の支援を受けて作成する経営改善計画書の費用を補助しています。この計画書は金融機関への融資申し込みにも活用できるものです。新規事業を立ち上げる際には、ぜひ経営改善計画書を作成しましょう。
ふるさと納税についての素朴な疑問
ふるさと納税は、応援したい任意の自治体へ寄附した金額のうち2,000円(自己負担分)を超える部分の全額が所得税や住民税から税額控除される制度です(上限額あり)。
例えば、昨年(令和2年)にふるさと納税を行い、今年、確定申告をした場合の控除は、令和2年分の所得税と、令和3年度の住民税から控除されます。このようなことから、きちんと控除されているのか、どこを見ればそれがわかるのかといった疑問を持つ人も増えています。
また、確定申告不要のワンストップ特例では、所得税からの控除は発生せず、令和3年度の住民税からの減額という形で控除され、確定申告の場合と税額控除の方法に違いがあります。どちらも控除される税額は同じです。
2021年8月号
電子化された領収書や契約書に印紙税はかかるのか?
日常の経済取引において作成する領収書や契約書には印紙税が課税されますが、PDFなど電子化された領収書や契約書を電子メールで送信する場合、印紙税は課税されるのでしょうか。
電子メールで送信後、改めて紙に印刷して取引先に渡した場合はどうなのでしょうか。あるいは保管のために、印刷するとどうなるのでしょうか。実務上、気になる印紙税の取り扱いについて解説しています。
限界利益率の改善と固定費削減を考えよう 変動損益計算書で経営を見える化する③
利益アップには、売上拡大の他に、限界利益率の改善や固定費削減などがあります。
限界利益率の改善には、売上単価アップや変動費率ダウンがありますが、取引先との関係もあるため、すぐには実行できないこともあります。得意先や仕入先の実績をもとに、よりよい取引条件が実現できないか検討してみましょう。
また、仕入量の調整による余剰在庫の削減や、限界利益率の高い商品グループの売上を伸ばすことなど、自社でできることを考えてみましょう。固定費についても今一度見直すとともに、業績に応じた役員報酬なども検討してみましょう。
経理業務のキホンの「キ」⑤ 的確な経営判断のため、月次決算の精度を高めよう
売上(売掛金)と仕入(買掛金)を月次で計上し、財産管理と資金繰りの見える化ができたら、より的確な経営判断ができるように、月次決算の精度をさらに高めましょう。
- 月ごとに仕入高や在庫に大きな変動がある場合は、原価率をもとに月末在庫を概算計上すれば、月次の利益への影響を小さくすることができます。
- 労働保険料、損害保険料や固定資産税、賞与など年払いや特定月にまとめて支払う経費や減価償却費は、年間の支払額や見積額を月割りして毎月計上することで、経費の発生を平準化することができます。
2021年7月号
経理業務のキホンの「キ」④ 正確な月次決算への第一歩
請求書の発行時や受領時に売掛金と買掛金を月次で計上することで、売掛金の回収予定や仕入代金の支払予定を把握できるようになります。
売掛金は、毎月、得意先への売上請求書を発行する際に、売上とともに仕訳計上します。買掛金については、仕入先からの仕入代金の請求書を受領したときに、仕入と買掛金を仕訳計上します。仕訳を得意先別、取引先別に計上すれば、月次での売掛金・買掛金管理ができるようになります。
売掛金と買掛金を月次で計上することは、発生主義による月次決算への第一歩です。
新型コロナがもたらした変化を分析し、今後の経営に活かそう!
新型コロナによる経営への影響はさまざまで、業績が悪化した企業もあれば、特需によって業績を伸ばした企業もあります。コロナ禍での売上、経費、労働環境について、良い傾向や変化がないか探してみましょう。
売上の変化のなかに業績向上につながる変化があれば、いかに事業展開を図るか、販売方法や業態を変えるかなど、顧客意識の変化を捉えて、戦略を検討しましょう。
仕事量や従業員の行動の変化によって、経費、コストも変化が生じていることでしょう。売上との関連に注意しながら分析し、見極めることが大切です。経費やコストの増減が売上実績に見合っているか検討しましょう。
また、新型コロナ関連の給付金等の終了や、制度融資の特例の縮小などがありますので、今後の資金繰りの見通しをしっかり立てておきましょう。
黒字化するにはいくら売ればよいのか?変動損益計算書で経営を見える化する②
経常利益がゼロ(限界利益=固定費)、つまり損益がトントンになる状態を損益分岐点といい、「売上高×限界利益率=固定費」の算式で表すことができます。
この算式をもとに、売上高、限界利益率、固定費の数値を入れ替えてシミュレーションすれば、固定費が増加したときや限界利益を伸ばしたいときの必要売上高などを求めることができます。
また、利益面だけでなく資金との関連を考え、借入返済額や減価償却費を見込んでシミュレーションすることで、借入返済に必要な売上高はいくらかを求めることができます。損益分岐点分析を活用してみましょう。
2021年6月号
限界利益が固定費を上回っていますか?
変動損益計算書で経営を見える化する①(全3回)
変動損益計算書は、費用(経費)を、売上の増減に伴って変動する変動費(材料費、外注費など)と、売上が増減しても変動しない固定費(賃金・給与や地代家賃など)に分類し、売上高から変動費を差し引いた限界利益、そこから固定費を差し引いた経常利益を算出しています。
限界利益は、粗利益とほぼ同じもので、企業の純粋な稼ぎ高であり、これが固定費を上回ることで固定費が賄えるのです。
固定費を限界利益率(限界利益÷売上高)で割れば、赤字でも黒字でもない損益トントンの売上高である損益分岐点売上高を簡単に求めることができます。
変動損益計算書をもとに、売上高、変動費、固定費、限界利益の数値をシミュレーションすれば、数値にもとづいた的確な経営判断ができるようになります。
確認しておきたい 追加融資と借入金返済への備え
新型コロナの影響が長期化するなか、追加融資が必要となるケースも出てきます。
昨年来の新型コロナ関連融資では、財務内容よりも迅速さが優先され、融資が受けやすい状況にありましたが、追加融資は審査が厳しくなることが予想されます。
追加借り入れの際には、直近の試算表、前年同月の売上高、資金繰り表などの資料をもとに、資金使途、必要資金額、返済可能性について金融機関に説明しましょう。
また、既存借入金の返済開始も始まります。返済原資を確認し、借換えや返済条件の変更(リスケジュール)についても検討しましょう。
政府系金融機関の新型コロナ関連の融資・保証についても、期限や対象要件等が見直されることがあるため、最新情報に注意しましょう。
押印のない契約書、証憑書類は有効なのか?
官民において押印廃止が進められるなか、押印の法的効果や押印のない文書の責任の所在や意思確認について、さまざまな疑問もあるでしょう。
- 押印の法的効果は、本人の印章(はんこ)によって押印された印影は、本人の意思に基づく押印と推定され、その本人が作成したものであると推定されることにあります。
- 契約書、請求書、領収書などへの押印を廃止しても、法的には有効ですが、文書の真正な成立の過程を裏付ける資料などを残しておく必要があります。
- 民間同士の取引において、責任の所在や意思を明確にしておきたい場合には、従来どおり書面に押印することも必要です。しかし、押印廃止の先には文書のデジタル化があり、今後は、電子署名や電子認証サービスを活用した文書のデジタル化が進むでしょう。
2021年5月号
第3次補正予算による中小企業支援策を活用しよう!
令和2年度第3次補正予算等では、新型コロナ対策として、中小企業向けの補助金、公的融資などの新設・拡充が盛り込まれました。
- 新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編等の思い切った事業再構築を図る中小企業等に最大1億円(通常枠は6,000万円)を補助する「事業再構築補助金」が創設されました。税理士等の認定経営革新等支援機関との事業再構築計画の策定が必要です。
- ものづくり・持続化・IT補助金について、感染対策と経済活動の両立のための設備の導入、販路開拓、テレワーク等のためのITツールの導入を対象とした特別枠が、補助率等を拡充し、「低感染リスク型ビジネス枠」(新特別枠)として改編されました。
- 事業転換・イノベーション・経営改善を支援するため、当初2年間の金利を0.5%引き下げた「設備資金貸付利率特例制度」や、金融機関の継続的な伴走支援を受けて経営改善に取り組む中小企業への「伴走型特別保証」が創設されました。
確認しておきたい 新型コロナに関連した税制の注意点
- 新型コロナ税特法により創設された「納税の猶予制度の特例」は、令和3年2月1日をもって終了しました。今後は、通常の猶予制度(換価の猶予、納税の猶予)を適用することになります。
- テレワーク(在宅勤務)する従業員に対して、会社が在宅勤務手当として一定額を渡切りで支給する場合は、給与として課税されます。テレワークに必要な事務用品等の支給や通信費・電気料金について、実費相当額を精算する場合は、課税されません。
- 助成金等を受給した場合は、法人税や所得税の課税対象になるため注意が必要です。雇用調整助成金の特例措置によって助成金を受給した場合は、支給決定を受けた事業年度に収益を計上することが認められます。
経理業務のキホンの「キ」③ なぜ帳簿書類の整理・保存が重要なのか
帳簿書類の整理・保存は、現金管理とともに正しい経理処理の基本であり、経営の意思決定と経営管理のうえで、欠かすことのできない業務です。
帳簿書類が、秩序正しく整理され、いつでも容易に見られる状態に保管してあれば、経理業務においても、書類の紛失、誤記、転記や請求のミスなどが起こりにくくなります。社長が経営判断に必要な情報を迅速に確認することができます。
帳簿書類は、商法、会社法、税法において保存期間が定められており、税務では、帳簿書類の保存が青色申告控除や消費税の仕入税額控除の要件になっています。電子への移行においても、紙ベースでの帳簿書類の整理・保存がきちんとできていれば、移行がスムーズに進みます。
2021年4月号
経理業務のキホンの「キ」② ~経理は現金に始まって現金に終わる~
日々の現金取引は、その日のうちに遅れずに起票し、正確な現金残高表(または現金出納帳)を作成するとともに、金庫内の現金を数えて、実際有高と帳簿残高が一致するかを確かめます。これが現金管理の基本です。
現金は預金と異なり取引記録が残らないため、あとからその動きを追うのは困難です。毎日、現金残高を合わせていれば、売上や経費、精算のもれがなくなります。
この現金管理ができていれば、現金に対する会計上の仕組みが構築されていることになり、誤りや不正を発見・防止する体制が整備されているといえるでしょう。
筋肉質で効率がよい会社をめざす(2) ~負債・純資産の部では信用力が問われる~
貸借対照表の「負債・純資産の部」は、企業活動を支える資金の調達先を表します。
営業活動を支える運転資金は、「たな卸資産回転期間+売上債権回転期間」と「買入債務回転期間」との差を見ることで、資金調達が必要な期間がわかります。この差のバランスを図ることで、資金繰りが安定します。
また、中小企業の多くは金融機関からの融資によって資金を確保しますが、「当期利益額+減価償却費」の金額が、1年以内返済額を上回っていれば、資金繰りは安定した状態といえます。
中小企業の税負担率は利益の30%以内であることから、70%は内部留保することができます。黒字化をはかり、利益を内部留保して純資産(自己資本)の蓄積をめざしましょう。
こんな方法もある! 資金調達のアイデア
資金調達というと、金融機関や経営者からの借り入れなどが一般的です。
しかし、代金前払いなどは、事前に資金を調達できるという点で、一種の資金調達の手法といえます。前金、前売り券、手付金などはその一例でしょう。
それ以外にも、保守・点検サービスの月額料金や、サブスクリプションと呼ばれる定額制動画配信サービスなどは、毎月一定額を受け取ることができ、資金繰りの安定に貢献します。
中小企業の利用が増えているクラウドファンディングや、農作物のオーナー制度なども、商品・サービスの提供前に収入を得る仕組みといえます。
新商品・新サービス開発の際には、資金調達のことも考えたビジネスモデルを検討してみてはいかがでしょうか。
2021年3月号
経理業務のキホンの「キ」 ~まずは会計伝票の誤りを正しく訂正すること~
実務において会計伝票に誤りを発見することがあります。この場合、誤りをさかのぼって訂正するのではなく、「発見した日の日付」で、取り消しと訂正の伝票を起票します。これが正規の簿記の原則に従った正しい訂正方法です。
「訂正の履歴をきちんと残す」ことで証拠能力として認められます。このことは紙の伝票においても、電子の伝票においても変わることはありません。
このような、日々の正しい会計処理の積み重ねが、正しい月次試算表や、適正な決算書、税務申告書の作成につながり、税務署や金融機関から高い評価が得られます。
筋肉質で効率がよい会社をめざす(2) ~資産は回転力が重要~
営業活動における「たな卸資産(在庫)→売上→売掛金(売上債権)回収」という回転が速いほど、資金効率がよくなります。これを水泳選手の身体にたとえると、右腕(たな卸資産)と左腕(売掛金)が効率よく回って、胸筋(現金預金)を強くしている状態です。
その一方で、上半身の動きを支える下半身(固定負債)が過大になりすぎる(脂肪過多)と、資金不足になるおそれがあります。売掛金と在庫の管理をきちんと行って、たな卸資産や売掛金を効率よく回転させ、筋肉質で効率がよい会社をめざしましょう。
こんなときだからこそ 3か月ごとに業績を総括!
先行きの不透明なこんなときだからこそ、月次の業績だけでなく、3か月ごとに業績を確認することが必要です。月次で見ると小さな変化であっても、3か月で見ると大きな変化になっているかもしれません。
3か月ごとに業績を総括し、課題や強化すべき点を確認し、目標とのズレを改善する方法を考え、目標との差異を小さくしていくことが大切です。状況によっては決算に向けての方針を変更しなければならないこともあります。
いま、金融機関は、融資先の事業、財務、資金繰りの状況を確認するモニタリングを重視する方向へ動いています。業績管理を行い、自社から積極的に業績などを報告することが必須になってきています。また、決算書や毎月の試算表を電子的に自動で金融機関へ提供することも可能です。
2021年2月号
令和2年分 所得税の確定申告はココに注意!
令和2年分の確定申告では、国からの給付金等や特例税制などに注意が必要です。
- 持続化給付金、家賃支援給付金、雇用調整助成金は課税対象になります。「特別定額給付金」(国民1人一律10万円)や「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」「子育て世帯への臨時特別給付金」は非課税のため、申告は不要です。
- マイナポイントや「Go To キャンペーン」によって付与されるポイントや給付は、課税対象(一時所得)として、他の一時所得との合計金額が50万円を超えると、確定申告が必要になる場合があります。
- 中間申告分や予定納税分について納税猶予の特例を受けている場合、猶予は確定申告期限までです。
コロナ禍でも伸びている売上はないか? ~おさえておきたい! 売上分析の着眼点~
全体の売上数字を見るだけではなく、その内容を得意先別や商品(製品)別など、詳細に分析してみましょう。全体の売上は下がっていても、得意先や商品によっては、「新型コロナの影響を受けなかった」「令和2年後半の売上が伸びている」という例があるはずです。
そのような分析をもとに、今後、力を入れていく得意先や商品を検討します。検討結果を、経営戦略や具体的な目標設定(短期計画、中期計画など)に活かすことで、事業継続につながります。
雇用を守り、事業を継続する手段を考える
新型コロナによって、雇用の維持と事業の継続が課題になっています。
今後も、休業や時短営業を余儀なくされる場合には、雇用調整助成金の活用を検討します。受給には、事前に立てた休業予定(計画)に基づいて、従業員を休業(1日又は一定の時間)させ、休業手当(平均賃金の60%以上)の支払いが必要です。
コロナ禍において、今後、労働時間や従業員の働き方を変えるなかで、給与の見直しなど、労働条件の不利益変更をせざるを得ないときもでてくるでしょう。
その際には、まずは経費の削減、役員給与の減額、公的助成金の活用など、会社としてできる限りの手を尽くす必要があります。そのうえで、従業員へ丁寧に説明し、その妥協点を探り、個別合意を得るという手順を踏まなければなりません。
2021年1月号
企業は社会の公器 ~自社の存在意義を再確認しよう~
「会社はだれのものか?」と聞かれたときにあなたはどう答えますか。もちろん懸命に働いて会社を維持してきた経営者にとっては「自分のもの」ですが、「一緒にがんばってきた社員のものでもある」「顧客が支えてくれて今がある」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
企業は「顧客の求めるものは何か」を常に考えて、そのニーズに応じた商品やサービスを提供するとともに、「社会」、つまり企業を取り巻く、顧客、社員、経営者(家族含)、取引先、地域社会、環境・資源、行政機関等のステークホルダーにも貢献する活動を行うことで、社会で存続できるのではないでしょうか。
コロナ禍で厳しい環境が続きますが、年初にあたり、自社の存在意義を考える機会を持ってみてはいかがでしょうか。
急激な環境変化のなかで、自社のできることを探そう
新型コロナによって企業を取り巻く経営環境が大きく変化しても、企業は売上回復を図らなければなりません。SWOT分析の手法を活用し、外部環境を、自社にとって追い風やチャンスとなる「機会」と、反対に逆風やピンチとなる「脅威」に分けて、市場の変化を分析してみましょう。
次に、内部環境として、自社が他社に勝てる、得意な点である「強み」と、反対に他社に負ける、不得意な点である「弱み」を再確認します。機会、脅威、強み、弱みの現状分析をもとに、追い風やチャンスを活かせる自社の強みを見つけて、そこから今できる戦略を考えて、まずは一歩を踏み出してみましょう。
急速に進むデジタル化の波
政府は、デジタル庁の新設、デジタル化促進のための規制改革、行政手続における「書面・押印・対面」廃止の法改正を令和3年の通常国会で予定しています。また、すでに実施・予定されている行政サービスのデジタル化もあります。
- マイナンバーカードを健康保険証として利用できる(令和3年3月から)。
- マイナンバーカードに運転免許証の機能を搭載される(令和8年を予定)。
- 旅券(パスポート)の電子申請が可能になる(令和4年を予定)。
- マイナンバーカードと銀行口座の紐づけにより、国税還付、年金給付、被災者生活再建支援金、各種奨学金などの公金受取手続の迅速・簡素化を図る。
- 年末調整や確定申告における控除証明書等の電子データ化により申告書への記載・計算・提出が自動化される。
デジタル化された行政サービスの利用には、マイナンバーカードが必須になります。
2020年12月号
年末調整は「申告書様式の変更」に注意
―電子化への準備を進めよう―
令和2年分の年末調整では、税制改正に伴い、「基礎控除申告書」「所得金額調整控除申告書」が新設され、「配偶者控除等申告書」と様式が兼用となった「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」になります。
新しい申告書は、従業員の給与収入、配偶者や扶養親族の有無などによって記入すべき申告書がそれぞれ異なります。記入もれや記載ミスがないよう、経理担当者は、記入上の注意事項などを早めに伝えるようにしましょう。
年々、年末調整手続が煩雑化し、従業員の手間や経理担当者の負担も大きくなっています。給与計算事務と合わせて年末調整手続を電子化することで、経理業務の省力化が可能になります。当事務所にご相談ください。
新型コロナウイルスに関する給付金や特例措置のタイムリミットを確認しよう
新型コロナに関連した給付金、支援措置の申請期限や適用期間の終了が迫っています。これまで要件を満たさなかった法人、個人事業者でも、年末にかけて新型コロナの影響を受けて、売上減少要件などを満たせば、給付金等の支援策を活用することができます。申請期限等に注意しましょう。
- 雇用調整助成金の特例(緊急対応期間)の適用期間:令和2年12月31日まで
- 家賃支援給付金・持続化給付金の申請期限:令和3年1月15日まで
- 令和3年分固定資産税の減免措置の申請期限:令和3年1月31日まで
- 納税猶予の特例:令和3年2月1日までに納期限が到来する国税等が対象
業務を1時間短縮できないか?
―効率化へのヒントを探そう―
新型コロナの影響によって売上減少や事業縮小を余儀なくされた一方で、業務上の無駄や非効率な点が浮き彫りになったという側面もありました。
このような変化を改善点ととらえ、業務内容や営業方法、従業員の働き方を変えたり、労働時間を減らしたりして、雇用を守りつつ人件費を抑えたりして、固定費や変動費の削減を図りましょう。
売上回復に目を向けるだけでなく、生産性向上や経営効率化など、経営の「質」を高める行動にトライしましょう。
2020年11月号
借入金の内容を確認し、返済時期・原資等を今から考える
政府の新型コロナ関連融資は、多くの企業において直面する支払いや手元資金の確保に活用されました。しかし、借入金は、いずれは返済しなければなりません。
まずは、借入契約ごとに元本、利率、返済条件、据置期間、返済期限などの借入情報を整理し、返済のシミュレーションを行い、返済原資確保のための経営改善について今のうちから考えておく必要があります。
経営改善にあたっては、新型コロナが経済全体に大きな影響を与えている状況から、得意先や消費者向けの売上改善だけでなく、固定費・変動費、不採算事業の見直しなど社内で実践できることから始めましょう。
「103万円」「130万円」扶養内で働くため“年収の壁”を確認しよう
一般に、パートで働く主婦は、収入が夫の扶養範囲である103万円(税金)や130万円(社会保険)を超えないように就業調整をするケースが多くあります。
しかし、現在は、配偶者特別控除が拡大され、夫の給与収入が1,095万円以下の場合、妻のパート収入が103万円を超えても150万円以下であれば、夫は配偶者控除(38万円)と同額の配偶者特別控除を受けることができるため、夫の税負担は変わりません。ただし、妻には所得税が課税されます。収入が130万円以上であれば、妻に社会保険料の負担が発生します。
また、FX・暗号資産の取引や転売による収入、生命保険の一時金など、パート収入以外の収入があると、収入が103万円を超えて、扶養の範囲から外れる可能性があります。
同じ土地でも価格は5つ 違いを知っておこう
土地の価格には、実際の取引価格(実勢価格)のほかに、国土交通省や都道府県、国税庁などが調査・公表する「公示地価(公示価格)」「基準地価」「路線価」「固定資産税評価額」があります。
「公示地価」や「基準地価」は、土地取引における価格の目安や、公共用地の取得価格の算定の基準とされます。「路線価」は相続や贈与における宅地等の評価額を求める際の基準に、「固定資産税評価額」は固定資産税算定の基準になるものです。
公示地価や路線価は、1月1日時点における土地価格が基準のため、新型コロナの影響が反映されていませんが、基準地価(9月公表)は、7月1日時点の土地価格が基準とされます。
基準地価の状況によっては、路線価のほうが高くなる逆転現象が起きた場合、路線価を減額修正する措置が実施される予定です。国税庁からの情報に注意しましょう。
2020年10月号
手元資金で何か月分の給料・家賃が支払えますか?
今、手元にどれぐらいの資金がありますか。新型コロナの影響によって売上減少が続く状況においては、最低でも6か月分の給料・家賃が支払えるだけの手元資金を確保しておきたいところです。
今後、事業を継続していく上で検討しておきたいことは、仕事量や顧客の減少に合わせた労働時間の削減、雇用調整助成金の活用などです。売上・利益の側面では、これまでのコロナ禍での事業の成果を検証し、費用対効果、限界利益の確保の視点から、事業の見直しや収益の確保策を検討しましょう。
新型コロナ・災害など不確かな時代だからこそ、月次決算とデータの安全性が重要です
近年は地震・風水害など災害が頻繁に起きています。また、新型コロナ危機のような想定外の事態においても、月次決算によって最新の業績が把握できていれば、影響の予測や資金繰り対策、給付金等の申請への素早い対応が可能です。月次決算の重要性が一層高まっています。それとともに被災したときの業務の早期復旧への備えとして、財務データの安全な場所への保管についても検討しましょう。
経理業務のペーパーレス化を進めよう
令和2年10月1日から電子取引の取引情報についての保存要件が緩和されます。これによって、経理業務のペーパーレス化がより一層進むことになるでしょう自社の体制も再確認しておきましょう。
居住財産の考え方が変わる!配偶者居住権の活用と税務上の注意点
例えば、夫の相続時に子が自宅を相続しても、配偶者居住権を設定することで、妻はそのまま自宅で暮らすことができます。配偶者居住権には財産価値が認められており、自宅の相続税評価額が高額なときや、配偶者の年齢が若いときには、相続時にこれを設定することで、将来の相続税負担を軽減できる可能性があります。
2020年9月号
特集「緊急 資金繰り対策」
歴史からひも解く コロナ危機に負けない経営者マインドとは
わが国は創業100年超の老舗企業が3万社にのぼる長寿企業大国であり、それらの企業は恐慌や大戦、震災などの苦難を乗り越えてきました。江戸時代のデフレ政策とされる享保の改革では、商人の7、8割が潰れたといわれます。
商人は、自己の責任で決断し、己を律し、行動しなければ生き残れないことを痛感し、困難に遭っても心が折れないために、商家のあるべき姿を家訓として残しました。商人が倒産した真の要因は目的意識が希薄であったことを知ったのでした。
歴史は繰り返します。今、コロナ禍で多くの企業が厳しい状況にある中で、今一度原点に戻り、会社の存在意義の再構築をすることの重要性を伝えています。
特集「緊急 資金繰り対策」
中小企業への資金支援を強化!第2次補正予算のポイント
第2次補正予算では、家賃支援給付金の創設、雇用調整助成金の拡充などの追加支援策が盛り込まれました。
- 家賃支援給付金は、支払賃料(月額)に基づいて算定した額の6倍が一括支給されます。ただし、法人は600万円・個人事業者は300万円が上限です。対象は、令和2年5月~12月における売上の減少が、1か月で50%又は連続する3か月の売上の合計が30%のいずれかに該当するテナント事業者です。
- 雇用調整助成金は、助成額の上限を1人1日8,330円から15,000円に引き上げるなどの拡充が行われました。なお、引き上げは、4月1日まで遡って適用されます。
- 新型コロナ感染拡大の防止措置による休業中に、賃金(休業手当)を受けられなかった人に対して「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」が支給されます。
新しいポイント還元制度「マイナポイント」が始まる
9月から、マイナンバーカードを活用した消費活性化策として「マイナポイント」が始まります(令和3年3月まで)。
マイナポイントは、利用者がキャッシュレス決済サービスを一つ選んで事前に登録することで、チャージや買い物時に、金額の25%(上限5,000円分)がその決済サービスのポイントとして付与されます。マイナポイント取得までの手順と注意事項を紹介します。
今後、調整手続の電子化など、行政サービスの電子化が進むと、様々な場面でマイナンバーカードが必要になります。
2020年8月号
特集「緊急 資金繰り対策」 家賃支援給付金を活用しよう!
新型コロナウイルス感染症の影響で売上が急減しているテナント事業者に対して、「家賃支援給付金」が最大で法人に月100万円、個人に月50万円が6か月分支給されます。対象は、令和2年5月~12月における売上の減少が次のいずれかに該当する事業者です。
- 1か月の売上が前年同月比で50%以上減少している
- 連続する3か月の売上が前年同期比で30%以上減少している
また、新型コロナウイルス感染症の影響で家賃の支払いが困難なテナント事業者を支援するために家賃の減額に応じた不動産オーナーについては、減額分が税務上は寄附金とはなりません。
特集「緊急 資金繰り対策」 新規・つなぎ融資、借換えの際の留意点
金融庁や中小企業庁は、金融機関に対して、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で資金繰りに窮する事業者への迅速かつ柔軟な対応を要請しています。
金融機関の融資判断においては、融資した資金が事業に正しく使われ、確実に返済されるかを重視します。したがって、スムーズな融資のためには、経営者が事業の状況と資金使途を説明するとともに、月次決算に基づいた直近の試算表、資金繰り表、経営計画が重要なことに変わりはありません。
助成金や給付金に税金はかかるのか?
国や地方自治体から助成金や給付金を受ける場合は、課税の有無や計上時期に注意しましょう。法人が受け取った助成金等は雑収入として法人税が課税されますが、消費税は課税されません。
個人が受け取った助成金等は、法令によって非課税になるもの(例:特別定額給付金)以外は、所得税の課税対象(事業所得等、一時所得、雑所得のいずれか)になります。
一般に、助成金等は「申請→支給決定→入金」の流れで支給されますが、収益の計上時期は、入金時ではなく、支給決定時になります。支給決定と入金が決算期をまたぐ場合は、期末に「未収入金」として計上する必要があります。
2020年7月号
特集「緊急 資金繰り対策」
納税猶予の特例を活用して手元資金を確保する!
令和3年1月31日までに納期限が到来する所得税、法人税、消費税などほぼすべての国税を対象に、無担保・延滞税なしで1年間、納税を猶予できる特例があります。
対象は、新型コロナウイルスの影響により令和2年2月以降の任意の期間(1か月以上)において、「売上(事業収入)が前年同期に比べて概ね20%以上減少」などの要件を満たす法人・個人事業者です。
納税猶予は、本来、税金として納付するはずの資金が手元に残ることから、強力な資金確保策になります。消費税の予定納税についても猶予の対象になるため、納税額が多額の場合は利用しましょう。利用には税務署への申請が必要です。
なお、地方税、社会保険料等についても同様の猶予の特例があります。
雇用調整助成金の特例の活用で給与を補てんする!
新型コロナウイルス感染症対策にかかる「雇用調整助成金の特例」について、4月1日から6月30日までを緊急対応期間として、全業種(全事業主)を対象に、次のような拡大措置が実施されています。6月30日までの休業の受給申請は8月31日までです。
- 売上高(生産量)の減少要件を1か月10%以上から5%以上に緩和
- 助成率を2/3から4/5に引き上げ(解雇を実施しない場合は9/10)
- 小規模事業者を対象に「実際の休業手当額×助成率」によって助成額を算出
- 対象となる休業を、一斉又は一定のまとまりで行う1時間以上の短時間休業まで拡大
- 雇用保険の被保険者でない従業員の休業も助成金の対象になる
事業継続・再起のための持続化給付金の活用と申請方法
新型コロナウイルス感染症の影響により、ひと月の売上が前年同月比で50%以上減少している事業者を対象に、最大で法人200万円・個人事業者100万円の持続化給付金が支給されます。ただし、下記のように前年の総売上からの減少分が上限になります。
前年の総売上(事業収入)-(前年同月比で50%以上減少した月の売上×12か月)
「前年同月比で50%以上減少した月」は、令和2年1月~12月の中から、事業者が任意に選ぶことができるため、12月までに50%以上減少した月があれば申請が可能です(申請期限は令和3年1月31日まで)。申請方法は原則としてオンラインになります。
2020年6月号
特集「緊急 資金繰り対策」
毎月の支払いに優先順位を付け、必要資金を確保する準備を!
新型コロナウイルスの影響によって、売上が急減し、直面する毎月の支払いのための資金繰り対策が最重要課題となっていることでしょう。
直面する支払いに対して、下記のように優先順位を付け、必要な金額を明確にして、資金を集めます。融資は、申請から実行まで時間を要します。また、すべてを融資で賄えるわけではありません。
その場合は、手元にある現金化しやすいもの、例えば、定期預金・積金、経営者の個人資金、小規模企業共済や生損保の貸付制度、カードローンなどの方法を検討しましょう。
- 支払手形の期日支払い
- 従業員の給料
- 仕入代金(買掛金)の支払い
- 家賃・水道光熱費・保険料などの毎月の支払経費
- 税金・社会保険料
- 借入金の利息や元本返済
月末の支払いを乗り切ったら、今後の資金繰り対策について、融資、助成金、必要資金の用途、資金化できるまでのスピードを考えて調達しましょう。
想定外の業績悪化で役員給与を減額せざるを得ないとき
定期同額給与の役員給与は、期首から3か月以内の通常改定を除いて、期中に改定した場合は、原則としてその一部が損金に認められません。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大といった想定外の事情によって、経営状況が著しく悪化したとき、役員給与の減額改定を行うケースがあります。このような場合、税務上は、業績悪化事由として認められます。
業績悪化事由とは、経営が危機に瀕している場合、役員給与の減額などの経営改善策を講じなければ、客観的な状況から今後の経営の見通しが著しく悪化することが避けられない場合などが該当します。
2020年5月号
“経営者保証のない融資”に向けた3つのポイント
中小企業の融資では、経営者が個人保証を付けることが慣行になっており、それが重荷となって、新事業展開、事業承継、事業再建などが進まないといった弊害がありました。
平成26年に、金融機関に個人保証を求めない融資を促す「経営者保証に関するガイドライン」が公表され、すでに一部で経営者保証のない融資が行われています。
同ガイドラインでは、中小企業が ①会社と経営者の関係を明確に区分・分離する、②財務基盤を強化する、③財務状況の正確な把握と適時適切な情報開示 に対応することで、金融機関の判断によって、経営者保証が求められない場合があります。
月次決算の役割 ~月単位の業績把握で正しい経営判断をしよう!~
月次決算には、次のような役割があります。
- 毎月の業績をいち早く把握できる。また、急激な経営環境の変化があっても、影響の予測や資金繰り対策などにも素早く対応できる。
- 粗利益率、資産、負債の増減を確認できる。
- 月次決算の数値を前年同月、前月、予算と比較することで、良いときは業績拡大のヒントとし、悪いときは早めの対応をとることができる。
- 月次決算のデータを金融機関に開示・説明することで、金融機関からの評価を高めることができる。
売掛金の時効が2年から5年に長期化します! ~管理と回収法を再確認しよう~
令和2年4月1日施行の改正民法では、債権の消滅時効が改正されました。改正前は、債権の消滅時効を10年、短期消滅時効として宿泊料・飲食代金を1年、製造業・小売業の売掛債権を2年、建築請負工事代金を3年などと職業別に規定していました。
改正民法では、これらの短期消滅時効と商法における商行為の時効5年を併せて廃止し、消滅時効を次のように統一して、いずれか早いほうが経過した時に時効となります。
- 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年
- 債権者が行使することができる時から10年
民法の改正を機に、売掛金管理体制を再確認し、未回収のまま長期間放置することがないようにしましょう。
2020年4月号
どうして経営計画が必要なのか?進むべき方向をわかりやすく示す
事業を進めるうえで、社長の経営方針を文書化し、それを数値計画にして説明することで、従業員も行動が起こしやすくなります。
「先のことはわからないので経営計画を作ってもムダ」と考えている経営者もいるかもしれませんが、今後1年間の売上がどうなるかはわからないとしても、1年間にかかる人件費などの固定費、借入金の年間返済額などは予測することができます。それらの年間支出額を限界利益率(粗利益率)で除すれば、概算の必要売上高を求めることができ、これを来期の目標売上高の目安にすることができます。
厳しい経営環境の中、自社の固定費を上回る限界利益(粗利益)を稼ぐには、経営計画によって会社全体のベクトルを合わせることが大切です。
生産性向上や先進的設備への投資を後押しする税制
令和2年度税制改正では、5G(第5世代移動通信システム)をインフラとして早期・集中的に整備するため、5G設備への投資について特別償却(取得価額30%)又は税額控除(取得価額の15%)ができる税制が創設されました。この税制では、地域の企業や自治体等が、地域の産業やニーズに応じて限定的なエリアで行う「ローカル5G」への設備投資も対象です。
特にローカル5Gは、人手不足や高齢化、地域経済の低迷などの課題解決の一つとして次のような活用が期待されています。
- 小売業:店舗と倉庫を瞬時に直結した在庫管理や電子決済によって人手不足を解消する。
- 建設業:遠隔からの作業指示、建機の遠隔操作・自動操縦によって現場の作業が変わる。
- 製造業:遠隔・自動制御による製造・品質管理などで人手不足でも生産性向上が図れる。
残業には「36協定」が必要です
従業員に法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えての労働や法定休日に労働をさせるには、従業員との間で労働基準法第36条に基づく協定(通称36協定)を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
また4月から、中小企業にも残業の上限規制が適用となり、今後、「36協定」を締結しても、残業時間は、原則として「月45時間・年360時間」を超えることができません。「特別条項付きの36協定」を締結すれば、「月45時間・年360時間」を超えて残業させることが可能ですが、具体的な事由とともに年720時間以下などの上限があります。
業務の繁閑、季節変動等により「1日8時間、1週40時間」の原則が馴染まない企業には、変形労働時間制などを採用する方法もあります。
2020年3月号
決算日までに確認しておくべき事項
決算業務をスムーズに進めるには、売掛債権、たな卸資産、固定資産などについて決算日までに確認しておく事項がありますが、本年は消費税率引き上げ後はじめての決算なので、まずは消費税処理の再確認をしましょう。
- 9月30日以前に販売した商品の返品処理時の消費税率を再確認する。
- 10%と軽減税率が混在する経費取引の適用税率を再確認する。
- 滞留債権・不良在庫への対応、不良在庫の処分などを検討する。
- 今期に取得した固定資産が、実際に事業のために稼働しているかを確認する。
- 仮払金・立替金を必ず精算する。
4月1日から不動産賃貸契約のルールが見直されます
4月1日施行の改正民法では、不動産賃貸契約における原状回復義務や敷金、債務の保証のルールが変わります。
- 通常の使用によって生じた損耗や経年変化については、借り手に原状回復義務がないことが法律上明確になります。
- 敷金については、敷金の概念やその返還についても明確になります。
- 借り手に個人の保証人を求める場合には、「極度額」を定めることが必須となります。
労働時間・休日は労基法に対応していますか?
4月から、中小企業にも改正労働基準法における残業の上限規制が適用されます。まずは法令が定める労働時間、休日、時間外労働(残業)について正しく理解しましょう。
- 法定労働時間:原則として1日8時間・1週40時間以内を超えてはいけない。
- 法定休日:1週間に1日又は4週を通じて4日以上与えなければならない。
- 残業時間:法定労働時間を超えて働かせると法定外時間外労働(残業)となる。
- 割増賃金:法定労働時間を超える残業には一定の割増賃金の支払いが必要になる。
2020年2月号
どうして経営計画が必要なのか?① 社長の想い(経営理念)を経営方針に落とし込む
経営計画は、社長が経営の良否を判断する基準となるものですが、「計画通りにならない」から意味がないとお考えの社長もいると思います。
まずは「基本方針」「商品・サービス」「得意先・顧客」「販売促進」「新商品・新事業開発」「内部体制」などについて、社長の頭の中にあるプランを書き出してみましょう。
社長の想い(経営理念)を経営方針に落とし込み、数値計画とともに経営計画をつくることで「生きた経営計画」として活用できるはずです。
「金融検査マニュアル」廃止で中小企業の融資環境が変わる!
金融庁が金融機関を指導する際の手引書「金融検査マニュアル」が廃止されます。これによって、これまでの「担保・保証」「財務の健全性」「資産査定(格付け)」を重視した金融機関の融資姿勢から、今後、「事業内容」「将来の見通しや経営計画」「決算書に表れない非財務情報」を評価する姿勢に変わることが期待され、特に短期継続融資の増加が見込まれます。
今後、金融機関は融資先企業の事業内容、将来性などを評価するための情報収集が重要になります。中小企業においては、経営計画、決算書や毎月の試算表を金融機関に提出するとともに、社長自身が自社の状況、経営に方向性を正しく伝えることが重要になります。
所得税確定申告の注意点 ~こんな収入の申告漏れはありませんか?~
個人事業者はもとより、会社経営者やサラリーマンなどの給与所得者で年末調整によって確定申告が不要な人であっても、次のような所得(収入)があれば、所得税の確定申告が必要な場合があります。
- 役員が会社に賃貸している不動産の賃貸料や会社への貸付金の利息
- 生命保険会社等から受け取った満期保険金や解約返戻金
- 上場株式等の譲渡や配当による収益などで一定のもの
- 不動産や金などの売却収入
- 個人事業者の自家消費と税抜経理を採用している場合の益税
- 預かった敷金と保証金の償却
2020年1月号
経営理念で会社の未来を変える!
経営理念は、創業者や経営者の考え方を明文化したもので、企業活動において守るべきポリシーです。そんな経営理念を変えることや、新たに作ることで、会社を大きく発展させることもあります。
事例1では、創業120年の白アリ防除会社が発想を転換し、自らの事業を「住環境を育む会社」として経営理念を変えることで、メンテナンス、リフォーム、耐震補強など幅広く事業展開した例を紹介しています。
事例2では、地元住民のいわれのない反対運動で窮地に陥った産廃業者が、「脱・産廃」を掲げ、新たに経営理念を作成し、資源再生会社となって、今や再資源化率98%を達成するリサイクル事業者へと変貌し、里山を育てるまでになった例を紹介しています。
小さな会社の「必勝の経営術」⑧ 軽装備の経営と社長の実力が決め手
競争条件の不利な会社は、資金や人の配分を効率的に活用することが必要です。また、社長の労働時間は大きな影響を及ぼします。
弱者の戦略⑪「軽装備に徹し、動きの速い会社を目指せ」。資金は、預金、売掛金、在庫、機械・設備、土地・建物、車両運搬具などに配分されていますが、重要性が高いものに多く、低いものは少なく配分することで、競争力が強くなります。
弱者の戦略⑫「社長は競争相手よりも多く仕事せよ」。競争相手よりも業績を良くするためには「社長の実力」(仕事時間の2乗×質)を高める必要があり、仕事時間として年間3,200時間働くこと、経営戦略の研究に力を入れて質を高めることを指摘しています。
今年から所得税制が変わります
令和2年分の所得税から、給与所得控除・基礎控除の控除額や上限額の見直しが行われ、年収850万円を超える人は税負担が増えます。一方で、個人事業者や請負など給与所得でない人のうち合計所得金額が2,400万円以下の人は、基礎控除の見直しにより税負担が軽減されます。
令和2年10月以降の年末調整から手続きが電子化され、保険料控除証明書や保険料控除申告書など年末調整関係書類の「従業員から会社へ」の流れが電子データでできるようになります。
2019年12月号
年末調整は「所得の額」に注意しよう!
昨年の年末調整では、配偶者控除等の改正に伴い、従来の申告書が「配偶者控除等申告書」に改められたうえ、これまで提出が不要だった配偶者控除を受ける人についても、新たに提出が必要になりました。そのため、申告書の記載にあたって「所得の見積額」の誤りや、記載すべき金額が分からないといった声がありました。
年収が給与のみであれば、年収の見込額から給与所得控除額を控除した金額が「所得の見積額」になります。年収の見込額は、例えば、既に11月までの給与(賞与を含む)を受給している場合は、1~11月までの課税支給額を合計し、さらに12月に支給される予定の給与を見積もって合計します。
次に「配偶者控除等申告書」(裏面)に掲載された「給与所得金額の計算方法」の表に年収の見込額を当てはめれば、所得の見積額が分かります。
貸借対照表の現状を確認し、健康体を目指そう!
貸借対照表(B/S)から、会社の健全度を見ることができます。
B/Sを人の体にたとえると、流動資産(特に現金預金)や純資産(自己資本)が大きく、不良債権や不良在庫、不要な機械設備、含み損を抱える資産のない状態が健康体といえます。
反対に、流動負債が多く自己資本が少ない状態は肥満体といえます。このような企業は、赤字続きのため不良な資産を処分できず、肥満体から抜け出せない状態にあります。肥満状態を解消するためには、黒字経営を実践することが何よりも重要になります。
小さな会社の「必勝の経営術」⑦ 新規開拓と顧客対応を工夫せよ
小規模1位や部分1位を目指すには、重点とする商品・サービス、営業地域を決めて、営業活動を効果的に行う必要があります。
弱者の戦略⑨「新規顧客の開拓に力を入れよ」は、新規顧客を増やすためには、見込み客を見つける必要があり、そのための「訪問、ホームページ、ダイレクトメール、広告、看板、チラシなど」の手法が効果的に行われているかを点検する必要性を指摘しています。
弱者の戦略⑩「積極的な顧客対応を欠かすな」においては、競争相手よりも「顧客から好かれ、気に入られ、忘れられない」ための方策を実行することが必要です。
例えば、取引高が多い会社に頻繁に訪問できているか、小売業・飲食業では、顧客リストを作成し、案内はがきを送るなど、自分にあった営業方法ができているかを確認してみましょう。
2019年11月号
パート収入と税金・社会保険の“壁”はどこ?
「○○円の壁といわれる税金・社会保険の扶養家族の範囲」について、従業員の人たちが気になる時期になりました。「収入と所得の違い」を含め、早めに情報発信しましょう。
「収入」とは、給与収入(賞与含む)のみであれば、給与の手取額ではなく、源泉徴収や社会保険料等を差し引く前の支給額のことで、「所得」とは、収入から給与所得控除を差し引いた額です。
例えば、夫がサラリーマン(正社員)で、妻がパートで働く夫婦共働きの場合、次の点について伝えましょう。
- 103万円の壁:妻は所得税が課税されず、夫は配偶者控除を受けられる。
- 130万円の壁:夫の扶養範囲からはずれ、妻に社会保険の加入義務が生じる。
消費税率10%への引上げで納税額は25%増加します!
消費税率10%への引上げによって、税率は2%の引上げでも、納税額は25%の増加になります。
軽減税率の導入に伴い、例えば外食業のように、主に飲食の提供による売上が10%、原材料(飲食料品)の仕入時の税率が8%になる場合、25%以上の増加になるため注意が必要です。
予定納税額は、税率8%を基準としているため、税率引上げ後の確定納税額が予定納税額より大きくなると予想されるため、納税額に慌てることのないように注意しましょう。
小さな会社の「必勝の経営術」⑥ 1位を目ざす重点地域をつくる
中小企業が商品・サービスを効率的、効果的に販売するためには、重点的に販売する営業地域を決める必要があります。
弱者の戦略⑦「市場規模が小さな地域に力を入れよ」は、地方にみられる海、山、川などによって地形的に分断された独立性の強い小さな地域、都市部であれば、高速道路や鉄道、川などによって地域から分断されている地域など、地域1位になりやすい地域です。
弱者の戦略⑧「営業地域の範囲を狭くせよ」は、中小企業は営業地域を狭くして、さらにその中に重点地域を決めて、まずはそこで1位を目ざします。そこで、1位になれば、次の重点地域を決めて、そこで1位を目ざすことを繰り返すことで、営業地域全体で1位になれるとしています。
2019年10月号
金融機関はどうして決算書の提出を求めるのか?
企業が滞りなく借入金を返済していても、なぜ金融機関は、毎年、決算書の提出を求めるのでしょうか。それは、金融機関の主要資産が融資先企業への貸出金だからです。
金融機関は、貸出金が企業の事業活動に正しく使われ、きちんと返済されるかを決算書によって確認することで、自行の資産保全を図っているわけです。また、融資先の財務データを常に把握できれば、追加融資や業績向上支援に即座に対応が可能になります。
企業は、積極的に金融機関へ、決算書や月次試算表を提供し、金融機関との対話を深めることで、信頼性が高まります。
10月1日をまたぐ取引の消費税率に注意しよう!
取引や請求期間が10月1日をまたぐ場合、適用する消費税率に注意しましょう。
- 保守サービス料金は、請求期間が10月1日以後にまたがる場合は税率10%
- 10月分の家賃は9月末に支払っても税率10%
- 通常のリース(所有権移転外ファイナンスリース)は、9月30日までに物件の引き渡しがあれば税率8%
- 電気、ガス、水道料金などは、10月中の料金確定分までは8%
- 出張旅費は、日当、交通費、旅費のそれぞれの消費税率に注意
小さな会社の「必勝の経営術」⑤ 1位づくりの商品戦略
中小企業が売上・利益を拡大するには、小さな市場であっても、自社の商品・サービスにおいて、市場占有率が1位になれる商品をつくることです。そして、1位の優位性を高めていくことで、売上、利益の拡大につながっていきます。
弱者の戦略⑤「市場規模が小さな商品に力を入れよ」は、市場規模が小さい商品だけでなく、特徴がある、強い競争相手がいない、同業者が見落としている、大企業が手を出さない、などの商品もあてはまります。
弱者の戦略⑥は「商品の範囲を狭くし、経営力の分散を避けよ」です。競争条件の不利な会社が、商品・業種、営業地域や、業界・客層を広げすぎると、経営力が分散して、かえって業績を悪くします。いかに、経営力を集させることができるかが大事になります。
2019年9月号
経理担当者必見! 9月末(消費者増税前)までに準備すべき経理実務
10月からの消費税率引上げと軽減税率の導入によって、10月1日以後暫くの間は、取引や請求業務において新旧の消費税率が混在するため、誤りが起こりやすくなります。誤りをなくすため、9月末までに経理上の準備をしておきましょう。
- 売上において、出荷から納品・検収までの期間が10月1日をまたぐ場合、売上計上基準の違いによって、適用する消費税率が異なります。得意先と打ち合わせをした上で、社内で情報を共有化しましょう。
- 「20日締め」請求などの場合は、売上計上基準に基づき9月末までの取引を一旦集計し、8%が適用されるものを区分しておきましょう。
- 仕入先に対して、9月30日までの請求分と10月1日以後の請求分とを分けて請求書の発行をお願いするなどの対応をしましょう。
消費税 10月からの領収書の発行・受領の際の注意点
小売店や飲食店が、市販や自社製作の「手書きの領収書」を発行しているときは、10月1日以後は領収書の記載事項に注意が必要です。
- 売上のすべてが10%である事業者が発行する領収書については、従来どおりの記載でも問題はありません。
- 売上のすべてが8%(軽減税率対象品目)となる事業者が発行する領収書については、従来通りの記載に加えて「全商品が軽減税率対象」という記載が必要になります。
- 10%と軽減税率対象品目がある事業者の領収書については、但し書き欄に「品目名」を書く際、それが軽減税率対象品目であれば「品目名(軽減税率対象)」の記載とともに、軽減税率対象品目の税込合計金額の記載が必要です。
小さな会社の「必勝の経営術」 経営の差別化に力を入れよ!
中小企業は、大企業と同じような商品・サービス、営業方法では太刀打ちできないため、大企業とは異なった考え方による差別化が必要です。
弱者の戦略③は「弱者は、強い会社とは異なった経営の差別化に力を入れよ」です。これは、商品、地域、業界と客層などのどれを差別化するかを明確にして、そこでどのように差別化するかを検討することが必要です。
弱者の戦略④には「弱者は1位づくりの目標に対し、経営力を集中投入せよ」があります。これは、商品、営業地域、客層において「小規模1位」や「部分1位」を目指すには、目標を一つに絞り、そこに経営力を集中投入しなければ、競争条件の不利な会社は、小規模1位を獲得できないことを示したものです。
2019年8月号
「キャッシュレス・消費者還元事業」への対応と注意点
10月から、「キャッシュレス・消費者還元事業」が始まります。この制度は、対象店舗でキャッシュレス決済をした消費者に購入金額の5%(フランチャイズ傘下の中小企業は2%)をポイント還元する制度です。
中小企業には、ポイント発行や端末導入費用の負担はなく、期間中は手数料が引き下げられるなど参加しやすい仕組みになっています。
今後、キャッシュレス決済の対応店かどうかは、店選びの基準の一つになると予想されます。制度を契機にキャッシュレス決済のメリット・デメリットを確認し、戦略的な検討が必要になります。
消費税 10月からの請求書等の様式変更はお済ですか?
軽減税率制度導入に伴い、仕入税額控除の方式として、区分記載請求書等保存方式が導入され、請求書等の記載事項として「売上に軽減税率対象の品目がある場合はその旨」「税率ごとの合計額」が追加されます。
4年後には、適格請求書保存方式となり、さらに「発行事業者の登録番号」「税率ごとの対価の合計額(税込又は税抜)と適用税率」「税率ごとの消費税額(合計)」が記載事項に追加されます。2段階での対応が必要になりますが、最初から適格請求書に対応した様式も認められます。
レジや請求書発行システムのほとんどは、適格請求書に対応した改修が行われているようですが、自社の様式を確認しましょう。独自様式による請求書を使用している場合は、4年後を見越した様式変更か、最低限、区分記載請求書に対応させるかを検討しましょう。
小さな会社の「必勝の経営術」③ 社長は1位づくりに強い願望を持て!
競争条件の不利な会社は、ランチェスターの第1法則を応用して、目標を定め、運営します。大企業と同じ戦略では勝てないからです。
弱者の戦略①には「弱者の社長は1位づくりに強い願望を持て」があります。これは、商品、営業地域、顧客層において、将来1位になれそうな市場で勝負することです。どのような市場であれ、1位になることが重要なことです。
弱者の戦略②は「弱者は自社より大きな会社を攻撃しない」です。経営に競争は付き物ですが、小さな会社が自分より大きな会社を攻撃目標にすると、結果は惨憺たるものです。社長が強気だと、大きな相手を攻撃目標にしがちなので、用心しましょう。
2019年7月号
7月1日から改正民法(相続法)が施行されます
主な改正点として「贈与税の配偶者控除の特例による居住用不動産の持戻しの免除」があります。
税制上の特例を使って配偶者に生前贈与された不動産について、改正前は配偶者の特別受益として、相続時にその不動産価格が遺産に加算(持戻し)されていましたが、改正法では、持戻しを免除する規定が設けられ、税法との食い違いが解消し、配偶者の老後の生活保障という被相続人の意思が尊重されることになります。
そのほか、遺産分割前における預貯金の一定の範囲内での払戻し、被相続人の生前に無償で療養・介護に尽くした相続人以外の親族(長男の妻など)の貢献度に応じた金銭の請求権の創設、遺留分権利者の権利侵害における請求権を原則として金銭請求とする改正が行われました。
消費税 価格転嫁と価格表示への対応② 価格表示を確認し、対応を検討しましょう!
消費増税に伴い、新たな販売価格の表示が必要となります。小売業や飲食業など消費者と取引する事業者(BtoC)は、総額(税込)表示が原則ですが、値上げと誤認されたくないなど事業者の事情に配慮して、総額表示と誤解されない措置をとれば、税抜価格による表示が認められます(令和3年3月末まで)。
事業者間取引(BtoB)においては、総額表示義務はありませんが、契約書等の消費税額についての記載を見直すことが必要です。取引先に確認し、整備しましょう。
免税事業者については、仕入にかかる消費税相当額を織り込んだ価格設定をしたうえで、価格表示をしましょう。
小さな会社の「必勝の経営術」② 中小企業は“強者の戦略”で戦うな!
ランチェスター法則には、競争条件の有利な企業が実践する「強者の戦略」と競争条件の不利な企業が実践する「弱者の戦略」があります。中小企業は、弱者の戦略で経営すべきですが、敵を知る意味で「強者の戦略」を知る必要があります。
強者は、まず商品や地域において総合1位になることを目ざし、さらに2位以下の企業の追随を許さないように、大きな資本力を使った戦略をとります。
商品であれば商品の種類を増やし、営業地域であれば多数の支店や営業所、販売担当者を配置して市場の範囲を広げます。弱者が新製品を出せば、直ちに同様の商品を販売します。地域市場のカバー率を高め、マス広告を利用して知名度を上げる。このような戦略を実行できるのは、わずか0.5%しか存在しません。
2019年6月号
小さな会社の「必勝の経営術」① ランチェスター法則で経営を再点検してみよう!
会社のエネルギー源である顧客を出発点として、①商品、②地域、③業界と客層、④営業、⑤顧客維持、⑥組織、⑦資金と経費という経営を構成する要素に対して、どのような戦略を立てるかが重要です。
その手掛かりとなるのがランチェスター法則です。元々戦闘における力関係を表したこの法則は、刀や槍などによる接近戦・一騎討ち戦で成立する「第一法則」と、銃や戦車など射程距離が長い兵器を使い、双方が離れて戦うときに成立する「第2法則」があり、それが経営に応用され、競争条件が有利な会社だけが実行できる「強者の戦略」と競争条件が不利な会社が実行すべき「弱者の戦略」という2つの戦略へと発展しました。
中小企業が、業績を伸ばすには、強者の戦略で経営しても上手くいきません。中小企業は、弱者の戦略で戦う必要があります。
消費税価格転嫁と価格表示への対応① 増税分をきちんと価格転嫁しよう!
10月からの消費税率引上げにあたり、2%の増税分を販売価格に転嫁しなければ、自社が増税分を負担することになり、売上や利益が減少し、資金繰りに悪影響を及ぼします。
消費者との取引(BtoC)においては、価格転嫁にあたり、経営判断に基づいて、税率引上げ前に需要に応じて値上げするなどの価格設定は、事業者の自由であって何ら問題はありません。
また、一律に転嫁する必要はなく、競合や市場動向などの事情を考慮して、個々に販売価格を見直すことにより、商品全体で増税分を転嫁してもよいとされています。
事業者間取引(BtoB)では、消費税転嫁対策特別措置法によって、仕入先への減額要求や買いたたきなどが禁止されています。
貸借対照表は経営者の顔 社長自身が説明できますか?
貸借対照表を前期と比較して、資産や負債に大きな増減がある場合に、その理由を金融機関から問われたとき、社長自身が説明していますか。
社長は、現金預金、売上債権、買入債務、たな卸資産、固定資産、借入金などの主要項目の増減する要因についての理解を深めましょう。
社長自身が決算書をもとに、実績と資産・負債の増減理由とその対応を説明し、さらに事業計画書をもとに今後の見通しを説明できれば、金融機関からの信頼性が高まります。
環境変化の激しい時代の経営の舵取りには、社長自身が会計数値から自社の課題に気づいて、対策に取り組むことが求められています。
2019年5月号
目標は“コーヒー1杯”に置き換えて考えてみよう!
セールスでは、「コーヒー1杯分の料金で~ができます」といったトークがよく使われます。これは「コーヒー1杯」という身近な小さい単位に置き換えることで、相手がイメージしやすくなるためです。
例えば、来期の目標売上を今期から400万円アップして、4,000万円とする計画を立て、具体的な行動計画に落とし込む際、400万円という数字だと漠然として、一見、無理なように思えます。
ところが、「コーヒー1杯」と同じように、「1か月あたりの売上をあと〇〇万円増やす」「1日あたりの売上を〇万円にできれば、目標に届く」「1日の来客数をあと〇人増やせばいい」というように考えてみると、現場レベルで実践できる行動やアイデアを具体的な行動計画に落とし込みやすくなります。
増税前に確認しておきたい消費税計算の基本
消費税の納税額は、「課税売上に係る消費税額」から「課税仕入れ等に係る消費税額」を差し引いて計算します。原則的な計算方法(本則課税)では、課税、非課税、不課税のいずれかに取引を分類し、それぞれ集計して、課税売上、課税仕入れ等を求め、納税額を計算します。
本則課税では、課税仕入れを、課税売上高に対応するもの、非課税売上高に対応するもの、両方に対応するもの等、その内容によって区分する個別対応方式と、課税仕入れの区分を要しない一括比例配分方式があり、それぞれの計算方法の違いから、納税額に差異が生じます。
消費税の計算について、どちらの方法が良いかを判断するためには、課税仕入れについて、内容別に区分する必要があります。そのため、日々の会計処理において、請求書等に基づき正しく区分を記載し、月次決算を行い、早い段階で消費税の納税額の判定を行える体制を整えましょう。
個人事業者の事業承継を税制面から支援~事業用資産の相続税・贈与税が実質ゼロ!~
個人事業者の高齢化が急速に進むなか、法人向けの特例事業承継税制に続いて、個人事業者の事業承継税制が創設されました。
この制度は、後継者が一定の事業用資産(土地、建物、機械、器具備品、車両運搬具、生物など)を承継する際、それらに係る相続税や贈与税の全額を納税猶予することで、後継者の負担を軽減し、事業承継を進めやすくしようというものです。
手続きは、2024年3月末日までの5年以内に、認定経営革新支援機関の指導・助言を受けて「承継計画」を作成し、都道府県に提出し、2028年12月末日までに実際に相続又は贈与を行います。
納税猶予された税額は、後継者が亡くなるまで、承継した資産を保有し、事業を続ければ、納税が免除されます。
2019年4月号
4月から労働時間の状況の把握が義務化!~出勤簿への押印だけではダメ!~
事業主(経営者)は、例えば、残業時間(残業代)を算定するには、必然的に従業員の労働時間の状況を正しく把握しなければなりませんが、労働基準法上は明文化されていませんでした。
しかし、長時間労働の是正などを柱とする働き方改革関連法のなかで、労働安全衛生法が改正され、労働時間の状況を把握する義務が明文化されました。
罰則はありませんが、労働基準法と合わせて、経営者の責務がより明確化されました。労働時間の状況の把握方法は、具体的には、次の方法によります。
- 使用者が、自ら現認することにより確認する。
- タイムカード、ICカード、パソコン使用時間の記録等を基礎として確認し、適正に記録する。
消費税:レジ等の対応に補助金を活用しよう!~補助率や対象が拡大!~
消費税の軽減税率の実施に伴い、複数税率に対応したレジの導入や電子的受発注システムの改修が必要となる中小事業者を対象に、その費用の一部を補助する「軽減税率対策補助金」があります。
本年から制度が拡充され、新たに「区分記載請求書等保存方式」に対応したシステムの改修・機器の導入の費用が補助対象となったほか、補助率の引き上げ(3分の2から4分の3)や、対象業種の追加(旅館・ホテル等の一部)が行われました。
申請は、事業者自身が行う場合は、9月30日までに導入・改修、支払いを完了し、12月16日までに申請します(事後申請)。あるいは、改修等を指定事業者に依頼する場合は、6月28日までに交付申請を行います。
資金繰りの落し穴!~急激な売上の増加や落ち込みには要注意~
一般に、取引は掛け(掛売上、掛仕入)で行われるため、売上の増加に伴って売掛金も増加し、売上の増加に先行して仕入れも増え、買掛金も増加します。
通常は、売掛金の回収と仕入れ・販管費の支払いのサイトにズレがあるため、利益と資金は一致しなくなります。帳簿上は利益が計上されていても、資金が残っているとは限りません。 売上が急激に伸びたときは、仕入も急増しますから、資金繰りが厳しくなります。
反対に、売上が急に落ち込んだときは、仕入の減少とともに買掛金が減少し、さらに売上が順調な時の売掛金が回収されることから、一時的に資金繰りが良くなることがあります。これを「業績が良い」と錯覚すると、落ち込みへの対応が遅れることがあります。
2019年3月号
決算を機に、自社の財産の状況を確認・整理をしてみよう!
自社の財産の中には、財務体質を悪化させるものがあります。一般に、業績の悪い企業ほど、売掛金、在庫、固定資産、仮払金や会社と役員間の貸し借りが多い傾向にあります。
- 未回収のまま滞留している売掛金は、再請求書や督促状を相手方に送付し、債権があれば、その回収可能性を検討しましょう。
- もう売れない商品、処分すべき商品が長期間残っていれば、セールや廃棄などで処分します。
- 使用していない固定資産(機械装置など)は、除却や売却を検討しましょう。
- 未精算の仮払金はすぐに精算し、貸借対照表に残高を残さないようにします。
自社の財産を洗い出し、無駄なものが決算までに整理し、スリム化をはかりましょう。
税率引き上げ後も8%の税率が適用できる取引を確認しよう!
10月1日からの消費税率が10%に引き上げられますが、一定の取引については、3月31日までの契約であれば、10月1日以後の引渡しであっても、8%の税率が適用される経過措置があります。
主なものに、建設工事や大型機械の製造請負(受注生産)や家賃、リースのほか、冠婚葬祭互助会の契約、新聞、テレビ、チラシ、カタログ、インターネット等による通信販売(通信教育や電子書籍の配信等を含む)、有料老人ホームの入居一時金などがあります。適用要件を確認し、駆け込み需要を取り込みましょう。
4月1日改正労基法施行!有給休暇の取得が義務化されます!
4月から、年10日以上の有給休暇(有休)の取得の権利がある従業員に対して、会社はそのうち5日分について有給休暇を取得させることが義務化されます。
取得させる方法には、従業員ごとの有休消化日数を把握し、消化日数が5日未満であれば、会社が有休の取得日を指定する方法(個別指定方式)のほか、会社が計画的に有休取得日を指定する方法(計画的付与制度の導入)があります。
計画的付与制度は、企業の実情に合わせて、①全社一斉に特定の日を有休にする、②部署、部門、営業所単位で有休をとる、③夏季(盆)、年末年始、ゴールデンウィークなどに合わせて、従業員一人ひとりの有休取得日をあらかじめ決める、などの方法があります。
いずれの方法も、5日分の有休の義務化について、従業員自らが有休を取得した日数、計画的付与制度によって取得させた日数分は、義務化の5日分から除かれます。
2019年2月号
外部環境の変化を分析して自社の新しい戦略を考えよう!!
AI技術の進展、人口減少、商圏の変化、取引先・競合他社の動向など外部環境が急速に変化する中、その変化を「機会」と「脅威」の視点から洗い出し、そこから抽出した外部環境を見ながら、さらに内部要因として、自社の「強み」「弱み」を洗い出しましょう。
そのための手法がSWOT分析で、次の4つの視点を可視化し、検討材料を明らかにします。
- 「機会」…市場・消費の動向、商品の需要を整理し、様々なビジネスチャンスを検討する。
- 「脅威」…自社の努力ではどうにもできない外部環境のマイナス要因を整理する。
- 「強み」…同業他社と比較して、具体的に「機会」に活かせる強みを考える。
- 「弱み」…成長発展や改革のネックとなる点を整理する。
これまで成立していたビジネスが成り立たなくなる前に、外部環境をきちんと捉え、自社の経営を再確認してみましょう。
軽減税率の導入で請求書・レシートの記載が変わります!
消費税の軽減税率が導入されると、取引ごとに適用される税率(10%と8%)を区分経理する必要があり、現在の請求書の記載事項に新たな事項を追加する必要があります。
- 2019年10月1日からは、簡易な措置として、現行の請求書の記載事項に「軽減税率の対象品目である場合はその旨」「税率ごとに合計した対価の額(税込)」を追加した「区分記載請求書等保存方式」が導入されます。
- 2023年10月1日からは、「適格請求書等保存方式」(インボイス)が導入され、請求書の記載事項に、さらに「発行事業者の登録番号」「税率ごとに合計した対価の額(税込又は税抜)及び適用税率」「税率ごとに合計した消費税額」が追加されます。
平成30年分 所得税の確定申告はここに注意!
平成30年分の所得税の確定申告期間は、2月18日(月)~3月15日(金)です。
- 個人事業者は、事業収入(事業上の売上、商品の自家消費や贈与、従業員への貸付利子、仕入割引、作業くずの売却代金など)と、必要経費(販売した商品の仕入代金、広告宣伝費、従業員給与、水道光熱費など事業に必要な経費)を正しく計算し、所得を算定します。店舗併用住宅の家賃や水道光熱費など、事業上の経費と家事費が混在する費用(家事関連費)は、事業上必要な部分が明らかで、合理的に按分できる場合は、事業に必要な部分については、必要経費として認められます。
- サラリーマンなどの給与所得者の大半は、確定申告の必要はありませんが、医療費控除や雑損控除、上場株式の譲渡損の繰越しの適用を受ける場合や、ネットでの収入、生命保険の一時金など給与以外の所得がある場合には、確定申告が必要です。
2019年1月号
企業存続のために最も大切な「利益」の考え方とは?
経営学者のP.F.ドラッカーは、「利益」には3つの役割があるといいます。
- 第1は「事業の妥当性を評価する役割」であり、自分たちの仕事ぶりを表す指標の一つになります。
- 第2は「事業活動における様々なリスクをカバーする役割」であり、将来の不確実なリスクに備えるためには、キャッシュを増やすことが必要です。
- 第3は「資金調達手段としての役割」であり、利益は投資資金の源泉となり、融資の際の定量的な評価の一因になります。
会社は、目指す目標を実現するためにコストを十分に賄えるだけの利益を生み出す活動に力を入れなければなりません。
飲食料品業だけではない!軽減税率はすべての事業者に影響あり!
消費税率10%への引き上げと同時に、飲食料品等を対象にした8%の軽減税率制度が導入されます。軽減税率は、飲食業や小売業、食品卸や食品製造業など飲食料品を販売する事業者だけでなく、すべての事業者に影響します。
飲食料品を販売する事業者は、請求書やレシートを発行する際に、8%と10%の税率ごとに区分した記載をしなければなりません。
飲食料品の販売がない事業者は、仕入、販売には10%の税率が適用されますが、経費として飲食料品を購入する場合には、8%の税率が適用されるため、帳簿への記帳にあたっては、税率ごとに区分しなければなりません。
改正消費税への対応には、時間をかけて準備する必要があります。早めに取り掛かりましょう。
1月13日から施行!「自筆遺言」が変わります。
平成30年7月成立の改正民法(相続法)において、自筆証書遺言の作成要件が緩和され、1月13日から施行されます。
これまで、自筆証書遺言の作成は、全文が自書でなければならず、作成時の負担は相当のものでした。改正によって、添付する財産目録については、パソコンでの作成や通帳のコピー、登記事項証明書など、自書でないものが認められ、作成時の負担軽減が図られます(ただし、全頁に署名・押印が必要です)。
遺言書の保管時における紛失、廃棄、改ざん、隠匿や相続を巡る争いを防止するため、法務局において自筆証書遺言を保管する制度が創設されます(2020年7月10日施行)。
改正によって、自筆証書遺言の作成、保管が容易になることで、遺言書を活用した相続対策が期待されます。